研究課題/領域番号 |
21K11791
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
大谷 隆浩 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (30726146)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 空間疫学 / スキャン統計量 / 空間データ / クラスター |
研究実績の概要 |
位置情報を付加した空間医学データをもとに疾病の発生との関連が強い箇所 (クラスター) を検出しその統計的有意性を判定する方法として,最大尤度比に基づくスキャン統計量が提案され,空間疫学研究や症候サーベイランスなどの分野で重要なツールになっている。本研究では多様な形式の空間データから精確に複数のクラスターを検出し,その統計的有意性を適切に判定する統計解析ソフトウェアについて検討する。新たなソフトウェアを開発するとともに,空間疫学研究の大規模な実データを用いた実証研究を行うことでその有効性の評価を行う。 2023年度は,これまでに開発を続けてきている統計解析ソフトウェアR用パッケージ「rflexscan」について,既存ソフトウェアによる解析方法を再現するための機能など,利用者の要望に応じた拡張を行った。rflexscanパッケージは引き続きオープンソースソフトウェアとして公開しており,新型コロナウイルスをはじめとした感染症の地域クラスター解析に応用されるなど,すでに世界中で利用が広まってきている。 さらに,前年度までに計算機シミュレーションを通じて有効性を確認してきた,情報量基準に基づく複数のクラスターの同定・検定法 (Takahashi & Shimadzu, 2018) について,実際の疫学研究への応用を目指して簡便に利用できる新たなパッケージとしてまとめる作業を行った。 解析手法の提案者らとは密に連携を取り,Rパッケージへのさらなる拡張手法の実装についても検討を進めている。また,国内の疫学研究者らと協力し,国内の大規模な空間医学データの解析など実践的な研究にも取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの研究開発の結果についてまとめているが,パッケージ開発に関する論文の掲載までには至っておらず,やや遅れていると判断する。ただ,研究者らと連携を取り論文化に向けてすでに一定の準備は整っていること,実際の疫学研究での利用についても共同研究として進められていること,利用者の要望に応じてRパッケージの拡張も進めていることなどから,次年度にはこの遅れは解消できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で開発しているrflexscanパッケージについては世界中の疫学研究において利用が広まってきていることを確認している。今後は複数のクラスターの同定・検定法についてRパッケージを公開し,研究開発成果の論文化を行う。また,連続量からなる空間データの解析手法についてもまだ実装できていないため,この開発研究も次年度に行う。地理情報解析や空間疫学の研究者らとは引き続き対面・オンラインでの打合せを行いながら,ソフトウェアの開発と実践的研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
パッケージ開発に関する論文の掲載には至らなかったため掲載費用がかからなかったこと,研究打ち合わせをオンラインや先方負担で実施し旅費を支出する必要がなかったことから,次年度使用額が生じた。次年度に行う出張の旅費および論文掲載料,学会参加費として使用する予定である。
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