研究課題/領域番号 |
21K11792
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
岩田 貴樹 県立広島大学, 公私立大学の部局等(庄原キャンパス), 准教授 (30418991)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 応力場 / ベイズ推定 / 統計科学 / 固体地球物理学 / マルコフ連鎖モンテカルロ法 |
研究実績の概要 |
通常の地震に比べてゆっくりとした地中のすべり現象(ゆっくりすべり、以下SSE)が近年注目されている。このSSEの発生様式(すべりの時空間分布)を捉えるには地殻変動データが主に用いられている。これに対し、「P波初動」と呼ばれる地震波データより得られる応力場の情報からSSEの発生様式を推定し、最終的には地殻変動データと統合化した手法開発を行うことが本研究課題の目的である。 P波初動から応力場の空間パターンを推定する手法は開発済みであり、本課題においてはこれを時空間に拡張する必要がある。推定アルゴリズムにはマルコフ連鎖モンテカルロ法を用いているため計算負荷が高く、この負荷の軽減が重要となる。今年度(令和3年度)においては、この負荷軽減の一環として、これまでの数十km程度の領域に対する応力場推定をより広域となる数百km程度の領域に対するものへと拡張することを行った。年度内では予備的な結果に留まってはいるが、山陰地方に対する解析では既存研究によるものと整合的な結果が得られた。 これに平行してSSEの発生様式の特徴を掴むため、SSEの規模分布に関する解析も行った。規模が従う確率分布として、ベキ分布と指数分布を適当な比率(混合比)で足し合わせ(混合分布)、さらに混合比が規模によって変化するようなモデルを提案し、これを南海トラフ沿いの複数領域で得られた実際のSSEの規模データへと適用した。領域によって結果が異なるが、従来研究で用いられている(単独の)ベキ分布・指数分布・tapered GR則に比べて、提案した混合分布の方が実データによりよく適合することを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
手法開発において1つの鍵となる計算負荷軽減については、従来行って来た解析に比べてより広域の応力場に対するものを行うことにより、ある程度の目途を付けることが出来た。また、SSEの特徴を掴むための規模分布に関する解析も行い、これらによって次年度以降行う手法開発・解析に関する知見を得ることが出来た。こういった状況から、現段階ではおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今年度行った広域の応力場推定による知見・経験を踏まえ、推定手法の時空間への拡張を本格化させる。引き続き計算負荷の軽減に関する手法の改良を進めると共に、人工データや実データを解析することにより手法の妥当性の検証や計算負荷に応じた適切なデータ量・解析領域・時空間分解能などの解析に必要となる種々の設定について検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)新型コロナの影響で出張がなくなったことなどにより、所属機関から支給される研究費に関し今年度はいくらかの余裕があった。これにより本研究課題で予定していた支出の一部を賄ったため。
(使用計画)次年度(以降)に購入を予定しているワークステーションを、当初予定したものよりもグレードアップすることにより、より効率的な研究の遂行に活用する。
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