研究課題
各個体や施設などの観測単位に対して,分布としてデータが与えられる場合,あるいは,ある程度十分なサイズの標本が与えられ,その分布に関心がある場合の,分布を対象とする回帰・分類樹やクラスタリングなどの方法に関しては,全米熱帯マグロ類委員会の C.E. Lennert-Cody 博士と共同で,解析手法,および,分割や併合によって生成されるクラスターの均一性の検定などの理論研究と,東部太平洋のマグロ巻網漁によって観測されたキハダマグロ体長データに対する応用解析の両面から研究を進めている.均一性の検定に関しては,医療統計分野で広く用いられている階層検定手順に基づく手法と計算量を抑えるためのアルゴリズムを考案したが,実データの解析においてより有用な方法として,厳密な均一性からある程度の違いを許容する近似性の検定への拡張を検討している.結果の一部は,国際シンポジウムで口頭発表を行った.ホタルの求愛行動に関する研究では,民間ホタル研究者の共同研究者が取得したヘイケボタルの雌雄の発光パターンの観察データと電子ボタルによる実験データに基づいて,生態学者とも共同で発光パターンと雄ホタルの誘因との関係を解析し,論文化に向けて議論を進めている.また,ゲンジボタルについても解析を進めるべく準備をしているところである.上記の他に,環境省が行っているPM2.5疫学調査で観測した児童の肺機能データの解析にも参加しており,小中学生の努力性肺活量などの肺機能の日齢や身長に対する分位点解析,日齢ごとの分布推定などの解析を進めている.また,経時測定データとして身長の成長パターンと肺機能の成長との関係解析も行う予定である.いずれの研究においても重要となる統計的因果推論に関しては最新の研究動向の把握に努めている.
2: おおむね順調に進展している
予定していた海外共同研究者の招聘,および,研究代表者の訪問は行えない状況ではあるが,オンライン打ち合わせを行うなどして議論や意見交換を行っている.分布データの解析に関する研究の論文化はまだ投稿には至っていないが,これは当初の想定していた方法をさらに拡張した手法を追加することによるためである.ホタルの求愛行動に関する研究も論文化に向けて議論を進めており,総合的に見て「おおむね順調に進展している」と判断した.
分布を対象とする回帰樹・クラスタリング手法に関しては,拡張した均一性の検定方法を提案・実装して実データを解析し,論文にまとめ学術誌に投稿する予定である.ホタルの求愛行動に関する研究に関しては、ヘイケボタルに関する研究を論文にまとめ学術誌に投稿する予定であり,ゲンジボタルの研究も共同研究者と議論を進める予定である.児童の肺機能データの解析に関しても共同研究者らと議論を進め論文にまとめる予定である.
海外共同研究者の招聘と研究代表者の訪問・国際学会の参加などが行えなくなったこと、また,論文投稿準備の英文校閲を共同研究者に行ってもらったので業者に依頼する必要がなくなったことにより,次年度使用額が生じた.次年度は、海外共同研究者の招聘、国内外の研究集会参加および研究討論のための旅費として使用する予定である.また、研究補助作業を依頼する研究員への謝金としても使用する計画である.
すべて 2022 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Annals of the American Thoracic Society
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10.1513/AnnalsATS.202104-511OC