研究課題/領域番号 |
21K11797
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
原 尚幸 京都大学, 国際高等教育院, 教授 (40312988)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | グラフィカルモデル / 因果探索 / 時系列 |
研究実績の概要 |
既存の因果グラフの学習アルゴリズムは、高次元小標本の設定において精度が著しく低下することが知られている。しかし、大規模な因果グラフにおいても、構造がスパースであることはよくある。スパースな因果グラフの場合、変数間の条件付独立の関係などから、因果グラフ上のD分離に対応して、変数集合を多数の部分集合に分割することが可能である。各部分集合ごとに因果グラフを学習する分割統治型のアルゴリズムを考えることで、高次元小標本の設定において精度が向上すると考えた。因果構造が線形であると仮定すると、変数間の条件付独立関係から、変数間の祖先関係を導出することが可能である。本研究では、変数集合を各変数とその祖先集合の和集合からなる族の極大集合族にグループ化することを提案し、各極大集合にDireceLiNGAMのような因果探索アルゴリズムを適用することで、因果グラフが識別可能になることを示すとともに、計算機実験によって高次元小標本の設定で既存手法に比べて精度が改善することを示した。 高次元の時系列の分析には、潜在因子を用いたモデリングが広く用いられている。本課題では、SVARモデルの一般形であるHyvarinen et al. (2010)のVAR-LiNGAMを、潜在変数を含むモデルに拡張したFAVAR-LiNGAMを提案し、因果構造の識別アルゴリズムを与えた。昨年度の時点で、潜在因子のモデルが特殊な場合のアルゴリズムを提案していたが、今年度は、アリゴリズムが適用できるモデルの範囲を一般化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
因果探索に関する課題については、分割統治型アルゴリズムや潜在因子を含む時系列モデルへの適用などは、想定通りの結果が得られている。 さらに、分割統治型アルゴリズムを検討する中で、LiNGAMにおける非正規性・線形性といったモデルへの仮定を緩めることができる特殊例を見つけ、現在一般論へと整理しているところである。また、分割統治法型における変数のグループ化についても、新たな手法を着想している。また、こうした議論は、潜在的交絡因子が存在するような場合にも適用が可能な例もみつけており、年度内の一般化も可能と考えている。 加えて、Vine Copulaを一般化し、より一般の変数間の条件付独立構造を記述することが可能なCopula表現についても一定の成果は得られている。年度前半に論文化をする予定である。 これらの成果が出そろえば、当初想定していた成果かそれ以上の成果が得られることになることから、本計画は概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度が本課題の最終年になるが、今年度はこれまでの成果の整理、論文化と成果報告を中心に行う予定である。前述のとおり1) 変数間の祖先関係とPCアルゴリズムを用いてLiNGAMにおける変数の非正規性の仮定を緩めたアルゴリズムの提案 2) 1)のアルゴリズムの潜在的交絡因子が存在する場合への拡張(FCIアルゴリズムの一般化) 3) LiNGAMの線形性の仮定の見直し 4) Vine Copula、偏相関Vineの拡張と、高次元グラフィカルモデルのスパース推定への応用などのテーマについての成果の整理と報告を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加予定の学会が本務校での開催となり、出張旅費として支出できなかったこと、成果発表に適切な研究集会が2024年度に複数開催が予定されており、2023年度分の出張旅費の一部を2024年度に回すことにしたため。
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