研究課題/領域番号 |
21K11819
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研究機関 | 小山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
飯島 洋祐 小山工業高等専門学校, 電気電子創造工学科, 准教授 (90565441)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 高速ディジタル伝送 / 多値伝送方式 / 伝送歪み / 多値符号判定 / 統計的評価 / 2次元マッピング |
研究実績の概要 |
半導体素子の高性能化に伴い、大規模集積回路システム内の電気配線上での通信においても高速化の要求が高まっており、多値伝送方式としてPAM-4(Pulse amplitude modulation-4)の採用が進んでいる。PAM-4伝送では、1シンボルで2ビットの情報を伝送でき、バイナリ伝送に対して2倍の情報量を伝送できる一方で、バイナリ伝送に比べて雑音耐性の低下や符号間干渉の影響が複雑化する。本研究では、これまで検討を進めてきた統計的評価手法による受信端シンボル分布の推定技術を応用し、新概念での多値符号判定方式の構築を目指している。
令和3年度では、PAM-4伝送におけるシンボル遷移毎の符号間干渉の影響を可視化するために、新たに受信端シンボルを2次元平面にプロットする事による2次元シンボルマップでの伝送評価手法を提案した。具体的には、一つ前のシンボル値をX軸、現在のシンボル値をY軸として受信端シンボルをXY平面上にプロットする。2次元にプロットする事で、PAM-4での前後のシンボル遷移毎のシンボル分布を可視化し、Eyeパターンでは困難なシンボル遷移パターン毎に符号間干渉の影響を評価可能とした。
さらに、本年度の検討では、大規模集積回路システム内での電気配線を想定し、実測したマイクロストリップ線路の実測特性に基づくシミュレーションにて提案評価手法を検証した。提案した2次元シンボルマップでの評価することで、Eyeが完全に閉じて従来のEyeパターンにおけるEyeの開口率では定量的な評価が困難な状況においても、2次元シンボルマップ上にて各シンボル遷移パターン毎の符号間干渉の影響を評価できる事を確認した。さらに、提案した評価手法を用いることで、FFE(Feed forward Equalizer)による波形整形処理の効果を可視化できる事を明らかにし、本提案の基礎的評価を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の成果として、以下の成果を得ている。さらに、その成果についてはIEEEの国際会議であるISMVL(多値論理国際シンポジウム)に採択されており、概ね計画通りの進捗となっている。
(1)受信端シンボルの観測データから推定したPAM-4のシンボル分布に基づく新概念での多値符号判定方式の開発に向け、当初計画していた基本概念の検討を実施した。新たに2次元シンボルマップによるシンボル遷移毎の符号間干渉の可視化を実現し、その基本概念を実測結果に基づくシミュレーションにて明らかにした。当初の計画では、混合ガウスモデル(Gaussian mixture model)に基づくシンボル分布推定を計画していたが、2次元シンボルマップによる可視化の有効性に着目し、当初計画の一部を変更して2次元シンボルマップによる評価手法の基本概念の検証および有効性を検証した。
(2)さらに、従来のEyeパターンによる伝送評価との比較検討を実施し、提案手法の基本概念とその有効性を実測データに基づくシミュレーションにて明らかにできた。具体的には、開発済みの伝送評価基板での伝送波形を実測し、そのデータを計算機に取り組むことで実測ベースでの定量的な評価を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究でも多値伝送における新概念での多値符号判定方式の構築を目指し、令和3年度の成果に基づいて以下の実施を進める。
(1)令和4年度では、当初の計画の一部を変更し、令和3年度に提案した2次元シンボルマップを用いた多値伝送特有の複雑な遷移パターンに起因する符号間干渉の影響評価について、より実践的な環境での評価を計画とする。特に、2次元シンボルマップを用いてシンボル遷移毎の符号間干渉の影響を定量的に評価可能とする事を計画し、その検証方法を含めて研究開発を実施していく。
(2)2次元シンボルマップで符号間干渉の可視化を実現する上で、新たにグラフ表示機能が充実する解析ソフトウェア(Igor pro)での評価・解析環境を構築し、2次元シンボルマップを用いたシンボル遷移パターン毎の符号間干渉の詳細解析の実現に向けた検討および実験的評価を進める。2次元シンボルマップにプロットした結果から、シンボル遷移パターン毎の定量的な評価指標および評価モデルを検討し、実験的にその有効性を検証していく。より実践的な環境での評価に向け、実際の通信システム上の伝送波形を用いた評価を検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
為替変動等による購入額の変動によって生じた軽微の次年度使用額について、翌年度計画している実践的な伝送環境での提案手法の評価実施に向けて翌年度分に合算して使用する。
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