研究実績の概要 |
本年度は,主に水平方向の進化(要求の詳細化)について以下のような研究を行った. 1)要求仕様書からの曖昧箇所の検出と修正: 要求仕様書において曖昧さを引き起こす単語に着目し,曖昧語リストを作成した.まず,被験者実験により25 の仕様書で 108 の曖昧語を検出し,さらに Word2Vec と cosine 類似度を用いて,108語と類似する単語を検出し,最終的に 436 の曖昧語とみられる単語をリスト化できた.被験者実験の結果,その中で218 単語が曖昧語としてみなされた.また,被験者による曖昧の判断には差があり,それらの差を数値化することにより単語の曖昧度を明確にする手法を開発した.自動化ツールによる評価の結果,仕様書中の深刻な曖昧語の検出が行え,曖昧でない語句への修正を支援することができた.文中の係り受け関係による曖昧性については,文の形態素解析により品詞の出現パターンによって語句間の係り受け関係が複数存在する文を抽出し, 係り元の単語と係り先の単語を特定する.両者の意味的類似度を同様に計算し,類似度の差が見られた場合は類似性の高い語句に係ると判断し曖昧性はないとする.逆に差がない場合はどちらに係るか判定不能とし曖昧性があると判定する.評価実験を行った結果,曖昧でない係り受けの適合率はよかったが,曖昧である係り受けの検出の適合率はそれほど高くはなかった.抽出した係り受け関係を提示することにより,修正の支援が行えることを確認した. 2) ゴール指向要求分析法iStarにおける不吉な臭いの検出:昨年度までの成果をもとに,さらに不吉な臭いの検出法の精度をあげるために,自然言語で記述されたゴール記述に生成AIの適用可能性を検討し,意味的な不吉な臭いの検出と修正を試行し,これまでのWord2Vecを使う手法よりも有望な見通しが得られた.
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