研究課題/領域番号 |
21K11840
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
角田 雅照 近畿大学, 理工学部, 准教授 (60457140)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ソフトウェア欠陥予測 / ソフトウェア品質 / ソフトウェアテスト / オンラインラーニング / オンライン最適化 |
研究実績の概要 |
ソフトウェアのテスト効率化のために,ソフトウェアに含まれる各モジュールでの欠陥の有無を予測することがしばしば行われる.欠陥を予測するモデルを構築するためには,あらかじめデータを収集しておく必要がある.通常,予測対象のソフトウェアのバージョンよりも前のバージョンで収集されたデータをラーニングデータとする.これはWPDP (within project defect prediction)と呼ばれる. ただし新規開発ソフトウェアの場合,前バージョンのデータが存在しない.このため,新規開発のソフトウェアにおいて欠陥予測を行う場合,別のソフトウェアから収集したデータをラーニングデータとし,モデル構築する必要がある.これはcross project defect prediction (CPDP)と呼ばれる. これまでのCPDPのアプローチでは,最適なモデルを一つだけ構築し,それを用いることが前提となっている.ただし,例えば5個のソフトウェアから得られたラーニングデータから5個のモデルを構築しても,どれがテストデータにおいて精度が高いかをテスト前に知ることは,これまでの研究を見る限り困難であると思われる. そこでCPDPにバンディットアルゴリズム(BA)を適用した.結合テストはビッグバンテスト手法を除き一つ一つのモジュールが順次テストされるため,1つのモジュールのテストが終わるごとに,複数の予測モデルの予測精度を評価する(欠陥が含まれるという予測結果と,実際のテストで欠陥が見つかり,それらが一致していたか)ことを繰り返す.BAを欠陥モジュール判別予測に適用することは先行研究などで行われているが,CPDPには適用されておらず,その効果は不明であった.CPDPの予測精度を改善するために,バンディットアルゴリズムを適用した結果,ソフトウェア欠陥予測の精度が大きく改善できる可能性が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画において,多様なソフトウェア欠陥予測におけるバンディットアルゴリズムの有用性を評価することを大きな目的の1つとしており,クロスプロジェクト欠陥予測におけるバンディットアルゴリズムの有用性を評価することを予定の1つとしていた.当初の計画通りにその目的が達成されたことから,計画が順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
今後はソフトウェア開発において,バンディットアルゴリズムが有効な範囲を調査することを予定している.バンディットアルゴリズムは下記の条件を満たす場合に適用可能である. (i) 予測精度評価がモデル利用中に可能であること.すなわち,予測結果に対応する実際の結果が記録されており,かつモデル利用が繰り返し行われること. (ii) 最適な予測モデルがモデルの利用中に変化しない. 例えばコードクローンやソフトウェアレビューなどは,上記(i),(ii)の条件がある程度当てはまるため,バンディットアルゴリズムが有効である可能性がある.そこで,最適なコードクローン検出方法やソフトウェアレビュー方法を選択するために,バンディットアルゴリズムを適用した場合の有効性を評価することを検討している.
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議,国内会議ともほとんどが出張を伴わないオンライン会議であったため,予定していた旅費の支出がなくなり,かつオンライン会議の参加費が通常よりもかなり抑えられた金額となり,参加費についても支出が抑えられたた.これらの理由により,次年度使用額が生じた.
翌年度は当初予定よりも学会発表を増やすことにより,研究内容に関する議論の機会を増やすことを計画している.さらに高性能なコンピュータを購入することにより,実験時間を短縮し,より多くの実験を容易に行える環境を構築することを計画している.
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