研究課題/領域番号 |
21K11845
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小南 大智 大阪大学, 情報科学研究科, 助教 (00709678)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Internet of Things / ベイズ推定 / 集団意思決定 / マルチモーダル処理 |
研究実績の概要 |
今後の社会基盤に必須となる、IoT (Internet of Things) における高度な意思決定を可能とする意思決定技術を確立することを目的とし、脳科学の知見を用いる意思決定手法に関する研究を実施した。
2021年度は、これまでに研究代表者が利用してきた、脳の情報処理モデルの一つであるベイジアンアトラクターモデルを、多種多様な情報を統合的に扱うために、分散して実施される意思決定を統合可能となるよう拡張した。はじめに、ベイジアンアトラクターモデルでは、脳の意思決定状態を表す隠れ変数を、複数のアトラクターを持つダイナミクスで表現している。認知の対象はこのアトラクターと一対一で結びつけられている。知覚した情報を元に、逐次的にこの状態変数をベイズ推定で更新することで、認知のプロセスがモデル化されている。提案した統合手法は、分散的に実施される意思決定タスクにおいて、「脳内の意思決定変数のダイナミクスにおけるアトラクターの数」と「アトラクターに記憶した情報が、認知すべきどの対象であるか」が共通化されていることを前提とする。元々のベイジアンアトラクターモデルでは、意思決定変数がどのアトラクターに近いものであるのかということが、観測方程式によって、アトラクターに記憶した認知すべき対象と結びつけられる。上記の前提をおくと、個々の意思決定の主体が観測する情報が異なったものであったとしても、意思決定の結果は「観測した情報が認知すべきどの対象に基づくものなのか」という情報で表現され、これはどの意思決定の主体にとっても共通の変数で表現される。この変数を意思決定の主体間で共有し、最終的な意思決定を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
具体的な手法の構築および、理論的な検証、単純な計算機シミュレーションによる検証まで順調に実施している。手法を具体的な問題に適用した評価の実施途中であり、国内外での発表原稿を作成している。これらは年度内の完了を想定していたため、全体的な進捗としては概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
分散的に行う意思決定について、現在はすべての意思決定主体(無線端末)が並列化されたアーキテクチャーとなっているが、大規模化のためにこれを階層的アーキテクチャーへと拡張する必要があると考えており、次年度以降にこれに取り組む。まずは、上位の層における情報統合の方法と、上位から下位の層にあたえられる統合後の情報を、下位の層がどのように活用するのかについて、これから研究を進める予定である。
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