研究課題/領域番号 |
21K11853
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
大越 匡 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 准教授 (00791120)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | センシング基盤 / モバイルプラットフォーム / オープンソースソフトウェア |
研究実績の概要 |
オンラインコミュニケーションにおける他者との思いやりあるコミュニケーションの重要性は注目を増している。オンラインコミュニケーション上での限定された情報から他者の感情状態をいかに推測できるかとい う「他者感情の推定力」が重要となっている。 本研究では、自分の感情の認識・制御や他者感情の推定力を高める因子として、人々のサイバー空間での生活における新たな種類の受容感覚は存在するのか、モバイル・ウェアラブルセンシングや機械学習技術に基づいて探索し、またその有効性を明らかにする。
初年度は、人々のサイバー空間での生活における新たな種類の受容感覚は存在するのかについて、心拍、キーボードミスタイプ率、アプリケーション利用時間等の複数の指標候補に着目し、それらの比較検討、およびユーザのコンピューティング生活中におけるそれらのデータを体系的にデータ取得できる基盤の研究開発を行っている。特にユーザのコンピューティングの大部分の時間を占めるスマートフォンにおけるアプリケーションごとの利用動向をデータとしてセンシングするための基盤技術を開発した。多種センサ情報獲得基盤AWARE Framework内にプラグインソフトウェアを開発した。本基盤を用いて動作検証や予備的な実験を実施した。また同ソフトウェアをオープンソースソフトウェア[1]として回部にも公開した。最新バージョンのものを含む世界で多数のユーザに利用されているAndroidプラットフォームにおいて、上述のデータを体系的に獲得できる安定した基盤ソフトウェアを実現できた。 [1] https://github.com/KarasawaTakumi0621/aware_appusage_plugin
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、課題1. 「調査と要件定義」、および課題2.「サイバー受容感覚情報基盤の設計」を平行して行っており、また一部の対象指標(アプリケーション利用状況)については基盤技術の具体的な開発まで進展している。
課題1においては、「ユーザがスマートフォン等モバイル端末の操作において常に行いかつ極めて基本的な操作」の同定を、アンケートに加えて実際に研究者と学生が共同でソフトウェアを利用・開発し議論の中から同定する手法をとっている。特に現在はユーザがスマートフォン上で利用するアプリケーションに着目し、その「一回あたり長さ」「時間帯」「頻度」といった特徴量を具体的に挙げて、それらを指標の候補として研究を薄めている。
課題2については、研究者らがこれまでも研究開発に参加しているモバイル・ウェアラブルセンシングフレームワークAWARE、およびそのデータに基づく特徴量抽出と機械学習モデル作成、ハイパーパラメータチューニングといったコンポーネントからなる情報基盤を設計中である。さらには成果にも記述の通り、一部のデータ種別についてはすでにデータ収集部のソフトウェア開発を進行し、完了して公開している。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、予定通り課題2, 3, 4を推進する方策である。課題2,3については、センシング部、データ保存部、特徴量抽出/モデル生成/モデル探索部それぞれにおいて設計(課題2)、および実装(課題3)を進める。
また課題4「イバー受容感覚同定の実験」の実施を年度後半以降に予定する。実験倫理について大学内にて申請の準備を進めると同時に、実験設計を行う。特に感覚に関する被験者からの主観的な回答の収集方法(尺度、収集手段、収集頻度/タイミングなど)等も含め総合的に検討を行う。初期的には研究室内で被験者を集め、少人数・短期間で実施し、システムの動作検証、実験設計の確認等を行い、次年度に実施する実験に向けて必要に応じたそれらの改良を行う。
以上の取り組みを、学会の研究会などに研究報告として投稿を検討する。具体的には情報処理学会ユビキタスコンピューティングシステム研究会、情報処理学会IoT行動変容学研究グループなどを想定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
課題2.「サイバー受容感覚情報基盤の設計」、「サイバー受容感覚情報基盤の構築」に関連して、2021年度は、次年度以降の実験も見据えつつ、特に基盤技術のソフトウェア開発に注力したため、ノートブックPCを中心とした支出となり、動作検証/実験に用いるモバイル//ウェアラブル機器の支出は予定より少なかった。その分2年目の2022年度にて、それら機材の購入に研究費を使用する方針である。
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