研究課題/領域番号 |
21K11863
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
吉田 紀彦 立正大学, 地球環境科学部, 教授 (00182775)
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研究分担者 |
松本 倫子 立正大学, 地球環境科学部, 助教 (90447277)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | コンテンツ指向ネットワーク / ネットワーク構造化 / ネットワーク内計算 / 自律分散協調 |
研究実績の概要 |
(1) 構造化CCNの実現に向けて、Tapestryに基づくCCN(Content-Centric Networking)の最初のプロトタイプを完成させ、動作を検証した上で、従来のCCNに対する優位性を確認している。この成果はまず国内全国大会で発表した。国際学術会議ないし国際学術論文誌への投稿に向けて準備中である。 (2) ネットワーク内計算について、負荷分散の最適化とセキュリティ保全の両者を目的としており、それぞれ成果を挙げた。前者については、コンテンツ配信ネットワークのサーバ誘導に関して、従来はサーバ群フロントエンドで実現していた機能をネットワーク全域に分散すべくルータに持たせることに成功し、成果をまず国内全国大会で発表した。後者については、侵入検知/防止システムをやはりネットワーク内に分散させて相互協調させる方式を考案し、プロトタイプ実装で実現性を確認して、成果をやはり国内全国大会で発表した。 (3) あわせて、構造化CCNも含む自律分散的なネットワークにおいて、ネットワークを構成する各参加ノード(CCNにおいてはルータ)の積極的な協調の誘引と(利己的ないし悪意ある)不適切なノードの排除を完全に分散的に行う方式を考案し、ネットワーク内計算によるセキュリティ保全に向けた布石とすることができた。成果を国際学術論文誌に発表し、すでに外部第三者の論文から参照されている。 (4) 他にも、自律分散的なネットワークにおける自己組織化と最適化について中央集権と自律分散との相転移をモデル化する新たな枠組みを、また、CCNと同様の発想に基づくIoTのセンサネットワーク構成方式をIoTのアクチュエータネットワークにも適用する方式を、それぞれ国際学術論文誌に発表し、いずれもすでに外部第三者の論文から参照されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、ネットワーク内計算の構造化コンテンツ指向ネットワークへの導入、そして負荷分散の最適化とセキュリティ保全への対応を目的としている。 実績概要の (1) および (2) にまとめたように、構造化コンテンツ指向ネットワークおよびネットワーク内計算それぞれについて、プロトタイプやシミュレータの実装で検証するなど、具体的な成果を挙げることができた。そして、まだ全国大会レベルではあるが、外部発表して取組みと成果を周知した。 また、実績概要の (3)、(4) は本研究の当初の目的や計画に明確には含まれないが、極めて密接に関係する、ないしそこから派生する重要なテーマに関する取り組みであり、複数の成果を国際学術論文誌に発表し、複数が発表後半年の内に外部第三者の論文から参照されるなど、国際的にも高い評価を得ることができた。 当初は予期していなかった問題などは起こっておらず、以上から、概ね順調な進展と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に従い、ネットワーク内計算の実現方式の基本設計を踏まえて、構造化コンテンツ指向ネットワークへの導入方式、両者の融合方式について、具体的な分散実装の詳細設計を進める。そして、Plaxton Tree という理論的データ構造に基づくネットワークにおいて、全体として必要とされる計算処理をどのようにネットワーク内の各ルータに分散配置するか、そのアルゴリズムも含めて考察と設計を進める。その成果を受けて、実験検証に向けたシミュレータのプロトタイプの構築に着手し、プラットフォームとして Mininet および Ryu といったネットワークシミュレータの検討、一方でモバイル IoT も含めた幾つかの題材の選定、実験項目の整理や実験手順の策定など、評価実験の準備を進める。 また、深く関連する研究テーマについても、特にセキュリティ保全に向けた取り組み、最適化に向けた取り組みなどを、本年度までの成果も最大限に活かして、着実に進めていく。 以上に関係する研究成果は、引き続き積極的に学会発表、国際学術会議、国際学術論文誌への投稿に結びつけていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額については、新型コロナウィルス蔓延の影響で成果発表の場が限られ旅費支出が抑制されたなどの分を補完しきれなかった理由で発生したものであり、次年度の助成金と合わせて物品費や論文掲載料などに充当する。
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