本研究では、大別して、2つの成果からなる。 第1の成果は、他のネットワークの地理的情報を得て自ネットワークの地理的設計をすることで、逆に、災害に起因する連鎖障害を減らすことを可能とするネットワークの地理的設計法を提案したことである。過去の災害時に、特に、バッテリー切れまでに電力網の回復がなされない場合、バッテリー切れと電力網の不通で生じた停電により通信サービス断が生じることが問題となった。これに対処するため、他のネットワーク、具体的には、電力網の地理的経路を情報として活用することで、このような電力網の不通で生じた停電により通信サービス断が生じる事態を最小化できる通信ネットワークの地理的設計法を提案した。 第2の成果は、マイクロ波による受信無線電力のモデル化と性能評価理論を提案したことである。これに基づき、携帯通信機器などの移動通信ノードの給電を無線により実施し、無線電力送受信をネットワーク全体として達成するための条件を明確化する理論を構築した。これを用いてマイクロ波無線電力に関する要求性能やノード密度などとの関係を明らかにした。 これらの成果について共通して以下のようなアプローチを用いる。モデル化と理論検討に重点をおき、ものづくり自体は行わない。(評価理論を具体的に定量化するためのプログラム開発は行う。)しかしながら、どのような要件を満たせば、所定のネットワークを実現できるかを明らかにすることで、ものづくりの目標設定の指針とする。
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