研究課題/領域番号 |
21K11883
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研究機関 | 京都橘大学 |
研究代表者 |
吉浦 裕 京都橘大学, 工学部, 教授 (40361828)
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研究分担者 |
佐藤 寛之 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (60550978)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | フェイクニュース / 情報共有モデル / 検知 / ニュース信頼度 / ユーザ間信頼度 |
研究実績の概要 |
情報共有モデルを用いたフェイクニュース対策に関し,下記の成果を得た. (1)誤り情報の存在を前提として,ネットワークのユーザによる情報共有をシミュレーションするモデルAAT(Autonomous Adaptive Tuning)を取り上げ,単なる誤りではなく意図的な嘘の存在を前提とするモデルFDM(Fake News Dissemination Model)を検討した.具体的には,ユーザ間の不信度の導入,信頼度と不信度のユーザペア毎の設定,悪意のあるユーザによる信頼度と不信度の詐称,影響力のあるユーザへのなりすましとアカウント乗っ取りによる誤り情報の意図的な発信をAATに追加し,それらの影響をシミュレーションにより調査した.その結果,ユーザの信頼性が真に低いことよりも信頼性の低さを高く詐称することの影響が大きいこと,なりすましの方が乗っ取りよりも容易かつ効果的な攻撃であり,1%のユーザがなりすまされることで80%のユーザがニュースの真偽を判断不能になることを明らかにした. (2)上記のFDMを用いて,フェイクニュースを検知すると同時に,各ユーザiがニュースを信じる度合(Pi),他ユーザを信じる度合(ti),疑う度合(di)を推定する手法を提案した.提案法は,Pi, ti, diおよび各ニュースの真偽をパラメータとしてAATを実行したときのシミュレーション結果が実データに最も近くなるようにこれらのパラメータを最適化する.FDMと実データの差が最小となる時のパラメータ値が,ニュースの真偽およびユーザの内面の推定値となる. (3)正しいニュース1件とフェイクニュース1件の実データを用いて,提案法の予備評価を行い,これらの例ではフェイクニュースを正しく検知できた.また,フェイクニュースの共有時には,ニュースを信じる度合,友人を信じる度合,疑う度合のユーザ間分散が大きいことを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画のうち,複数のニュースの同時伝搬のシミュレーション以外は実施した.複数のニュースの同時伝搬については,ニュース間の相互作用をシミュレーションに取り入れるとパラメータ最適化の処理時間が膨大になることが問題である.また,実データを用いた評価では,正しいニュース1件とフェイクニュース1件(関連ユーザ数500人程度)の小規模実験しかできなかった.今後は,シミュレーションモデルFDMおよびパラメータ探索処理を効率化することで,これらの残課題に対応したい.
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度には提案法を試行錯誤的に改良し,その改良を実験プログラムに逐次的に加えた.そのため,実験プログラムが過度に複雑化し今後の改良が困難である,また,処理が非効率であるという問題点が顕在化している.そのため,令和4年度には,まず理論面の成果を整理しながら,実験プログラムを簡潔に作り直したい.そのうえで,上述した残課題への取り組みおよび,より大規模な実データを用いた提案法の評価改良を行いたい.
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