研究課題/領域番号 |
21K11887
|
研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
河内 亮周 三重大学, 工学研究科, 教授 (00397035)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 秘密計算プロトコル / ネットワークトポロジー / 秘密同時通信 / 条件付き秘密開示 / 量子情報通信プロトコル |
研究実績の概要 |
2021年度における活動では,既存の秘密計算プロトコルにおいてネットワークトポロジーに何らかの制約を課している研究についての調査を実施した.例えば国際会議ITCS 2016で発表されたHaleviらの研究において,任意の対話通信パターンを持つ情報理論的に安全な秘密計算の構成はスター型ネットワークトポロジーにおける情報理論的安全な秘密計算,つまり情報理論的安全な非対話型秘密計算の構成に帰着されることが示されている.一方でこの方法はプロトコルが必要とする通信量や乱数量を大きく増加させるため,より制限されたトポロジーでより効率的なプロトコルの構成方法が必要であることが課題である.実際に同じ論文でチェーン状ネットワークという非常に限定されたトポロジーにおいてはより効率的なプロトコルが構成可能であることも示されており,このトポロジーをより現実的なものに拡張しながら効率を悪化させないといったプロトコル構成技術を一般化する方法が研究課題であることが分かった.またこれまでの研究プロジェクトの知見によって,スター型ネットワークにおける秘密計算のモデルの一種である秘密同時通信や条件付き秘密開示におけるプロトコルの通信複雑度と乱数複雑度の解析を行った.この結果によってスター型ネットワークにおける秘密同時通信プロトコルにおける共有乱数の必要長が通信データの必要長から導出できることを示した.また量子情報通信を許したときの秘密同時通信プロトコルの古典通信のみのプロトコルとの差異を検討し,いくつかの計算タスクにおいて必要十分な通信量が量子通信を許したときに古典通信における限界を突破することを理論的に示した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ネットワークトポロジーを想定した秘密計算プロトコルの既存研究の調査と今後の研究課題の設定だけに留まらず,スター型ネットワークトポロジーにおける秘密同時通信および条件付き秘密開示といったモデルでの秘密計算プロトコルにおいて,通信複雑度と乱数複雑度の新たな関係性を示す研究成果や秘密同時通信における量子情報通信の古典情報通信に対する優位性解析について具体的な成果を得ており,想定していた計画よりも進捗を得ていると考えられる.
|
今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要で述べたとおり,国際会議ITCS 2016で発表されたHaleviらの成果が残した研究課題に取り組み,効率的でかつより現実的なネットワークに適用するプロトコル設計手法について検討を行い,プロトコルの理論的解析を進める.既にプロトタイプとなるプロトコルを得ており,どの程度目標とする課題が解決できるのかは今年度の課題として取り組む予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた学会参加による最新の研究状況調査や共同研究実施のための対面による研究打ち合わせが新型コロナウイルス感染症の拡大状況から不可能となり,その費用に予定していた旅費や参加費を次年度への持ち越すことを検討している.
|