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2022 年度 実施状況報告書

ブロックチェーンでファンジビリティとセキュリティを両立するための自己防衛方式

研究課題

研究課題/領域番号 21K11891
研究機関広島市立大学

研究代表者

上土井 陽子  広島市立大学, 情報科学研究科, 准教授 (80264935)

研究分担者 若林 真一  広島市立大学, 情報科学研究科, 教授 (50210860)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードブロックチェーン / ファンジビリティ / 暗号資産 / 自己防衛方式 / 無断悪用
研究実績の概要

ブロックチェーンは次世代の情報基盤技術の1つとみなされている.ブロックチェーンでは通貨価値の等価交換性を意味するファンジビリティの維持が重要であるが,犯罪に関連した資金の流入も指摘されている.本研究ではブロックチェーンの公開情報の悪用による利用者の犯罪への巻き込みや見知らぬ貸付の可能性を排除するため,(1)ファンジビリティを維持したままで,利用者が公開情報の無断悪用を選択的に排除できる自己防衛のセキュリティ方式を新たに提案し,(2)提案方式を既存のブロックチェーンに導入し,(3)提案方式を標準化することを目的とする.
本研究では,[課題1] 受領者のための選択的自己防衛方式の提案とBitcoin Coreへの組込みの実現と安全性と計算処理コストの性能解析,[課題2] 提案方式のGoEthereumへの組込みの実現と性能解析,[課題3] 標準化プロセスへの提案と実用化に向けた調整,に分けて実施する.
本年度は主に[課題2]を実施し,[課題1]のまとめと[課題3]への導入を行なった.具体的には,まず,課題1のまとめとして,2022年6月に国際会議でBitcoin Walletへの提案方式の組込みに関して発表した.さらに,課題2に関して,昨年度,概略を決定していたEtherumに関する選択的自己防衛方式を柔軟性を備える一方でセキュリティホールとなる変更を最小限に抑え堅牢にするため,2段階の方式に詳細化した.詳細化方式を開発者用Ethereumブロックチェーンプロトコルに組み込み実現し,Ethereumのテストブロックチェーンでシミュレーション実験を行なった.実験の結果,通常の取引と比べた手数料の増加が4.5%程度で済むことが確認できた.また,課題3に関し,Bitcoin Walletでの提案方式において送金者と受領者の情報交換方法を関係に応じて選択可能とする方針を決定した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は主に[課題2]を実施し,[課題1]のまとめと,[課題3]に関する準備を行なった.具体的には,前年度の調査によりアドレス管理の概念が大きくことなるため,Bitcoinブロックチェーンへの導入を試みた提案選択的自己防衛方式をEthereumにて導入することが難しいと分かっていたため,Ethereumに関する新しい選択的自己防衛方式を提案した.提案方式ではスマートコントラクトと呼ばれるプログラム記載可能なアカウントを活用し,受領者が認めた送金者からのみ送金可能にする仕組みを採用した.また,提案方式では受領者のアカウントを2段階で管理する.外部アカウントと呼ばれる残高管理アカウントでは煩雑な変更を避け,かつ,操作を限定することでセキュリティを堅牢にする一方で,スマートコントラクトと呼ばれるプログラム可能な汎用アカウントを利用して様々な仕様を記載可能とする柔軟な構造を連携させる.提案方式の導入・実装をEthereumの開発者用オープンソースソフトウェア上で行い,その後,Ganacheと呼ばれるテスト用に開発された個人のEthereumブロックチェーン上で提案方式の動作確認,および,導入のオーバヘットを計測した.実験の結果,通常の送金手数料が21055Gas(2023年2月時点の相場で日本円換算で約89円)に対し,提案方式を導入した場合の送金手数料が21999Gas(同約93円)であり,約4.5%の手数料の増加で済むことを確認した.
また,課題1のまとめとして,2022年6月に国際会議でBitcoin Walletへの提案方式の組込みに関して発表した.さらに,課題3に関し,Bitcoin Walletに関する提案方式での送金者と受領者の情報交換方法を関係に応じて選択可能とするための機能追加の方針を決定した.
以上より,当初の計画通り,研究は概ね順調に進展していると判断した.

今後の研究の推進方策

昨年度,今年度の研究により,代表的なブロックチェーンであるBitcoinブロックチェーンとEthereumブロックチェーンのそれぞれに導入することを想定した2つの選択的自己防衛方式のプロットタイプを実現し,方式を利用した場合の取引にかかるオーバヘッドが実用的な範囲内であることを確認した.来年度は,当初の予定通り,[課題3] 標準化プロセスの提案と実用化に向けた調整 を行い,外部からの評価を受け,実用化に向け解決すべき課題を洗い出し,運用を目指す.

次年度使用額が生じた理由

国際会議1件,国内会議4件の発表を行なったが,全てオンラインので会議参加であったため,旅費の支出がなかった.本年度の研究成果を論文として掲載するため,2件の論文投稿,国際会議での発表を予定しているため,論文掲載料,及び,旅費を次年度へと持ち越した.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2023 2022

すべて 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] Bitcoin Walletでの受領者未承認問題の解決法の実現の課題について2023

    • 著者名/発表者名
      内藤 早紀,上土井 陽子,若林 真一
    • 学会等名
      2023年暗号と情報セキュリティに関するシンポジウム(SCIS2023)
  • [学会発表] 連続的なデータ公開のためのm-不変性に基づく一般化手法の安全性向上2023

    • 著者名/発表者名
      張 扶蘇,上土井 陽子,若林 真一
    • 学会等名
      2023年データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM Forum 2023)
  • [学会発表] Introduction of a New Method for Preventing Recipient Unapproved Transactions to Bitcoin Wallet2022

    • 著者名/発表者名
      Chuki Hayama, Yoko Kamidoi, and Shin'ichi Wakabayashi
    • 学会等名
      2022 IEEE 46th Annual Computers, Software, and Applications Conference (COMPSAC)
    • 国際学会
  • [学会発表] ゼロ知識証明に基づく検証可能な秘密分散法の危険性2022

    • 著者名/発表者名
      澁川 良輔,上土井 陽子,若林 真一
    • 学会等名
      第24回IEEE広島支部学生シンポジウム(HISS2022)
  • [学会発表] 移動軌跡データに対する階層的クラスタリングに基づく(k,δ)-匿名化手法2022

    • 著者名/発表者名
      浜田 凪,若林 真一,上土井 陽子
    • 学会等名
      情報処理学会データベースシステム研究会(2022-DBS-176)

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公開日: 2023-12-25  

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