研究課題/領域番号 |
21K11911
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
杉原 健太 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 任期付研究員 (80621929)
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研究分担者 |
小野寺 直幸 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 研究職 (50614484)
山下 晋 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究職 (80586272)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 多相流解析 / 沸騰 / GPU / Phase field |
研究実績の概要 |
沸騰水内の沸騰・凝縮および熱流動挙動の解明は沸騰水型原子炉の熱交換システムにおいて非常に重要である。沸騰による小さな気泡生成から大きな気泡へ合体していく過程で燃料棒との伝熱挙動が変化するため、気液界面形状や気泡の圧縮性などを考慮した解析が重要になる。しかし、原子力数値流体計算では複雑な界面形状を有する気液二相流を直接取り扱うことが計算資源的に困難であったため、気泡形状を直接計算せずに時間および空間的に平均化した物理モデル(二流体モデル)が広く採用されている。二流体モデル理論は原子炉の安全性評価に大きな成果を挙げてきたが多くの実規模実験や実験式のフィッティングなどの経験的な補正項に依存するところが大きく、沸騰による体積膨張や合体・分離などを繰り返す気泡の運動を直接解析するには至っていない。 本研究ではGPU型大型計算機を利用した沸騰気泡流れの熱流動解析に向けて、界面追跡型の気液二相流解析コードを開発した。圧縮性・非圧縮性流体の両方に対応できるように開発し、バンドル体系解析に適用可能であることを確認している。界面追跡型の気泡流れ解析には気液界面の移動現象を精度良く計算する必要があるため、界面の数値拡散が少なく従来型の界面追跡法(SLIC/PLIC-VOF)よりも高精度なTHINC/WLIC法を採用していたがバンドル体系のような長い流路では拡散界面が非物理的に剥がれる問題が明らかになった。そこで、THINC/WLIC法と同じ双曲線関数を平衡解にもつ保存型フェーズ・フィールド法を適用することにより解決した。経験的に決定する必要があったフェーズ・フィールド変数に対する最適化を実施し、気液二相流解析の界面追跡計算の精度を向上することができた。本研究は界面追跡法を用いた気液二相流計算の解析技術の高度化だけでなく原子力工学や様々な産業分野の基盤技術確立に繋がる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、沸騰気泡流れの大規模GPU解析に向けた計算コードの基礎を開発した。共同研究者と開発を進めている気液二相流解析コードJUPITER-AMRを非圧縮性流体だけでなく圧縮性流体にも対応させ、バンドル体系解析にも適用可能であることを確認した。従来用いていた界面追跡法ではバンドル体系のような長い流路の解析において非物理的な気泡剥がれが生じるという問題があったため、気液界面の数値拡散を抑える手法として有効なフェーズ・フィールド法を適用することで解決した。フェーズ・フィールド計算を界面追跡手法として適用する際には界面幅やモビリティなどの変数を適切に用いる必要があり経験的に決定されていたが、計算手法に応じた最適なパラメータが存在することを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、原子力工学分野における研究としてバンドル体系の気液二相流解析精度の高精度化を計画している。 バンドル体系の気泡流解析を実施し実験結果との比較を行なった結果、数値解析ではボイド率を過大評価してしまう事が明らかとなった。その原因は既存の界面追跡法では2つの界面が接近すると非物理的に合体してしまい、ボイド率が過大評価されてしまう点にある。既往研究で気泡同士の反発を表現するためには気泡直径に対し1600格子以上の超高解像度計算が必要になるとの報告があるが、バンドル体系のような実規模の解析では現実的に不可能である。そこで、多数の気泡計算において、個々の気泡に対し独立した相を計算するマルチ・フェーズ・フィールド法を用いることにより5から10格子程度でも気泡の反発を解析可能となり、気泡流れの高精度計算を実現する。 最終年度には開発済みの圧縮性流体計算モデルに対して沸騰モデルを適用し、バンドル体系での沸騰気泡解析を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
出張予定の学会が新型コロナ蔓延防止対策のためにオンライン開催に変更されたため、開催地への出張旅費が必要なくなった。また、所属機関の大型計算機を無料で利用できたため計算機利用料として計上した分が余った。 次年度は、国内外の学会参加料、論文投稿料、大型計算機利用料(必要であれば)、解析データ蓄積装置、可視化用PC等に使用する予定である。
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