研究課題/領域番号 |
21K11915
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
向井 信彦 東京都市大学, 情報工学部, 教授 (20350233)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 物理シミュレーション / コンピュータグラフィックス / 可視化 / 医工学 / 粒子法 |
研究実績の概要 |
本研究は従来研究からの継続研究であるため,ある程度のシミュレーションモデルと手法は作成している.しかしながら,本研究では僧帽弁と大動脈弁との連動動作や,左心室の等容性収縮,および等容性弛緩を考慮した血流と圧力変化の可視化を新たな目標としているため,最初の年度にあたる令和3年度はシミュレーションモデルの見直しを行った. 特に,大動脈弁および左心室は,それぞれ弁の開閉,および等容性収縮を実現するために,弾性体としてモデルを作成する必要がある.弾性体は物質の剛性を示すヤング率により,挙動がかなり異なる.しかしながら,生体心臓のヤング率を測定することは不可能であるため,他の臓器である肝臓などのヤング率を参考に左心室のヤング率を決定した.また,僧帽弁と大動脈弁の連動動作を取り入れることで,左心室から大動脈へ大量の血液が流れるようになった.ただし,シミュレーションの圧力変化を文献値と比較すると,左心室の圧力値が文献値よりも高いため,左心室の等容性収縮を取り入れたシミュレーションを行った.この結果,左心室の圧力が高くなり,血液は一気に大動脈へと流れ出した.左心室から大動脈へ血液が一気に流れると大動脈内の粒子が異常接近してシミュレーションが崩壊するため,左心室から大動脈へ血液を流すと同時に,大動脈からの血液流出も考慮する必要がある.ただし,大動脈から多くの血液が流出すると,大動脈の圧力が低下することになるため,今後は左心室から大動脈へと一気に血液を流すが,大動脈の圧力が低下することなく,シミュレーションを継続できる手法を検討する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は従来からの継続であるため,シミュレーションモデルや手法は確立している.このため,新たな手法としての左心室の等容性収縮などの導入は容易であるが,シミュレーション結果を文献値と比較すると,まだ充分ではない.また,近年におけるコロナ禍の影響で研究成果を発表する学会の開催が中止や延期,あるいはオンラインとなったため,研究成果の発表は充分行えていない.
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今後の研究の推進方策 |
当初の目的であった左心室の等容性収縮をシミュレーションに取り入れることができたため,今後は,左心室および大動脈の圧力変化が文献に近づくように手法の改良を試みる.また,大動脈の圧力はほぼ一定に保たれるものの,左心室の圧力はほぼ0[kPa]近くまで低下するため,この機構の実現が課題である.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は従来からの継続研究であり,また,令和2年度および令和3年度の学会はコロナ禍の影響でほとんどがオンライン開催,あるいは中止や延期となった.この結果,従来の継続研究費より必要な費用を支出していたため,本研究費から支出する必要はなく,残額が発生した.研究成果は着実に出てきており,また,令和4年度の学会は対面開催も多く予定されているため,研究成果を多くの学会で発表するために予算を使用する.
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