研究実績の概要 |
多相連成災害の素過程を解明する計算力学手法の構築するため,以下のような研究を進めた. (1) 鉛直上昇流による飽和粒子層の内部流動化に対する流体・固体連成計算 底面から局所的に流入する鉛直上昇水流(平均流速約0.77 m/s) により,粒子層で内部流動化が発生し,最終的に水流が粒子層を貫通して崩壊に至る過程を対象として,実験および粒子スケールの流体・固体連成計算を行った.実験では,2 種類の礫粒子(粒径約7 mm と4 mm)および粒径約7 mm のガラスビーズを用いて,高速ビデオで粒子の動きを撮影し,超小型間隙水圧計による計測を行った.一方,計算では個々の粒子を四面体要素で表現する粒子モデルを利用し,最小粒径粒子の計算では,粒子モデル数を21,936,流体計算セル数を117,504,000 として,粒子周辺の流体計算に十分な分解能を設定し,2,176 プロセスの並列処理により演算を高速化した.実験および計算結果を用いて,粒子層内に生ずる過剰間隙水圧の時間的・空間的分布を比較するとともに,計算結果を利用した粒子移動パターンを示し,一連の過程が進行する力学的な要因や,粒子形状および粒径による現象の相違について考察を加えた. (2) 密度流の数値解析における圧力計算の前処理法 C-HSMAC 法における圧力ポアソン方程式の求解に前処理付きBi-CGSTAB法を用い,その効果について考察した.その結果,前処理により計算時間が短縮されることが確認できた.特に,Multigrid 法を前処理として用いた場合に,C-HSMAC 法の反復回数が他の解法と比べて大幅に少なくなるケースが存在しており,この現象も計算時間の短縮につながっていると考えられる.
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