研究課題/領域番号 |
21K11926
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
佐々木 大輔 金沢工業大学, 工学部, 教授 (60507903)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 空力音響解析 / 吸音ライナ |
研究実績の概要 |
吸音ライナ(音響ライナ)の2次元モデルに対して,音圧レベルを変化させた音波(平面波)を入射し,音響解析を実施した.100dB~160dBの範囲において解析を実行し,160dBの高音圧においても解析できることを示した.音圧レベルが140dB以下では,吸音性能の高い共鳴周波数が明確に確認できた一方,高音圧の160dBでは,吸音性能が大幅に低下し,明確な共鳴周波数は確認できなかった.吸音ライナのセル内や頸部での粒子速度等を調べることで,吸音性能に対する影響を調べた. また,吸音ライナの3次元解析を実施し,2次元解析との比較を行った.2次元モデルを奥行方向に延伸した3次元モデル(頸部の孔形状をスリット型)にした場合,音響解析・空力音響解析共に3次元解析の結果と2次元解析の結果は,吸音率の周波数変化だけではなく,頸部より周期的に生成される渦構造もよく一致した.そのため,スリット型の吸音ライナを想定する場合,2次元解析で吸音ライナにおける現象を調べられることを示した.更に,頸部の孔形状を,円形,正方形,矩形と変えた3次元音響解析,空力解析,空力音響解析を実施した.その結果,流れ場中に音波を入射した解析では,流れと音の干渉により頸部から生じる渦構造の生成が促進されることを明らかにした.一様流れ方向の頸部の孔長さにより,生成される渦構造が変化すること,また縦渦の強さが変化することが確認できた.それらが吸音性能や圧力損失に与える影響については更なる研究が必要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度,2次元音響解析による大音圧による入射音の影響や3次元解析と2次元解析が一致することを示すことができたが,当初予定していたレジスタンス・リアクタンスの実験値との比較は未実施である.その理由の一つとして,半導体不足による計算機の納入遅れや,大音圧を入射した際の音響解析に,想定よりも計算量が必要となってしまったことが挙げられる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究で使用している音響解析・空力音響解析の妥当性を明らかにするために,検証に使用する実験データを早急に確定し,レジスタンス・リアクタンス等について比較する.なお,必要に応じて,実際にリグ試験装置にて非定常データの取得を行うためのライナを設計する.解析結果の妥当性を確認した後,不確定性を導入した空力音響解析法の構築と実証を行う.流入音波に対する擾乱及び形状の微小変更に対する流れの影響を,音響解析の解析結果と比較することで明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度開催された学会・会議はオンラインが多く旅費が生じなかったこと,また使用するコンパイラが無償化されたことで,予算に残額が生じた.また,昨今の半導体不足による納入遅延やデバイスの高騰があったため,購入できた計算機に制限があった.そのため,解析能力の不足等が確認できた場合,解析に必要なデバイスの追加購入を検討する.また,コロナ禍もあり,国際学会参加の旅費の負担が増すことが予想されることから,旅費分を増額する.
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