研究課題/領域番号 |
21K11927
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研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
岡本 直也 愛知工業大学, 工学部, 准教授 (80547414)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 乱流 / 並列計算 / DNS / スペクトル法 / 倍精度 / 単精度 |
研究実績の概要 |
乱流は乱れが強いことが本質であり,その強さを表すレイノルズ数が大きくなるほど,シミュレーションを行う際に扱う速度の大きさのスケール比が増大する。このことから,高レイノルズ数乱流ほど計算の精度がシミュレーション結果に与える影響が増大すると予想される。ただ,仮に影響があるとしても,どの程度のレイノルズ数から影響があるのか,どのくらいのシミュレーション時間から影響があるか,どの統計に影響があるかについての知見が,従来研究を調査しても必ずしも十分ではないと考えられる。 本年度は,精度に関するものとして倍精度,単精度の違いをとりあげ,従来に開発済の乱流DNSの倍精度スペクトル法に加え,本年度は単精度スペクトル法のDNSコードを開発し,精度が乱流DNSの結果に与える影響を富岳上で評価した。対象とする乱流は周期境界条件下の3次元一様等方性乱流であり,小スケールを励起し続けるため大スケールにおける外力を negative viscosity により与えた。乱流におけるエネルギー散逸率やエンストロフィーの統計量(n次モーメントや空間的最大値)を調べたところ,低レイノルズ数乱流においては次数(n=1,2,...7)によらず(空間的最大値も含め),倍精度・単精度の違いは小さかったが,レイノルズ数の大きい場合は,次数の低い統計は精度の影響が小さいが,次数の大きい統計は(空間的最大値も含め),単精度DNSの結果は倍精度DNSの結果を過少評価する傾向があることがわかった。この結果は,乱流シミュレーションの際に,精度の違いに敏感な量を明らかにしている。したがって本年度の成果は,シミュレーションによって得られた統計のうち,何は信頼できて何は信頼できないかを知る上で重要である。また,精度の違いは計算コストにも大きな影響を与えることから,計算コストの知見を与えている点においても意義深いと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コードの開発や実行がされ、精度がシミュレーション結果に与える影響に関する知見が得られているため。HPCI利用研究成果集に掲載された文献があるため。
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今後の研究の推進方策 |
現状の結果を論文としてまとめるほか,今回得られたDNS結果を利用して新しいDNSや解析を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に繰り越すことで、次年度の予算と合わせて効率的に研究費の使用(計算機使用料など)ができるため
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