本研究では,養蜂用セイヨウミツバチの生育管理への利用を目的とし,巣板や巣箱内部を撮影し,画像処理や機械学習等によって巣房の状態やダニの寄生状況を自動計測する手法の研究開発を行っている. まず,巣房の状態計測では,セマンティックセグメンテーションモデルであるPSPNetを用いて有蓋蜂児領域とその他の領域の2クラスに分類する検討を行った.また,物体検出とセグメンテーションの同時学習を行うマルチタスク学習モデルであるMulti-Task Deconvolutional Single Shot Detectorに着目し,育房状態解析に適用する検討を行った.その結果,有蓋蜂児育房は95%以上の精度で判別できることが明らかとなった.一方,蜜や花粉の巣房の判別精度は85%程度であり,光沢や育房壁の影を考慮する必要があることが分かった. ヘギイタダニ計数手法の検討では,巣箱の底に敷いた白紙上に落下したダニを自動計数するAndroidアプリを開発し,論文化することができた.また,ハチ個体に寄生したダニの検出を目指して検討を行った.まず,ハチ全体ではなく,腹部のみをアノテーションすることで,ハチの密集度の高い画像で個体計数の正解率が向上することが明らかとなった.今後,この方法でハチを検出後,ハチ領域のみを高解像度化し,胸部と腹部に付着する微小なダニを検出する手法へと発展させる予定である. 研究期間全体を通じて,約1200枚のハチや巣板,ダニの画像を収集することができ,撮影方法やアノテーションのノウハウを蓄積することができた.今後も得られたデータを用いてモデルの改良を進め,ミツバチの生育管理システムの実用化へつなげたい.
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