研究課題/領域番号 |
21K11933
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
西 一樹 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (00208125)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | カメラ / イメージセンサ / 傾き計測 / 光軸歪み / 解像度 / ディストーション / シャインプルーフの原理 |
研究実績の概要 |
モバイル端末・車載・監視用カメラなどの小型カメラモジュールは光学アライメント調整が難しく、組み立て精度不足により画質低下を招くことが問題になっている。特にレンズ・イメージセンサ間の僅かな傾きにより生じる「片ボケ」(画像上でボケが不均一になる現象)は画質上無視できない問題である。本研究では、テストチャートの撮影と画像解析だけでセンサの傾きを高精度に検出可能な方法として、テストチャート・レンズ・イメージセンサ間の幾何学的配置と画像の振幅・位相の関係を利用することにより、キャリブレーションフリーな測定系を実現し有効性を検証する。本年度は以下について実施した。 画像の振幅情報によるセンサ傾き測定法の確立: 2つの方法による計算プログラムを作成した。1つはエッジチャートの撮影画像に対して、エッジに近接して並ぶ画素方向の輝度分布を抽出し、その画素間差分からエッジ付近でのボケ広がり度合いを求め、画像の各位置でこれを計算しボケ量に関する画像分布を得る方法である。もう1つは正弦波チャートの撮影画像に対して、画像の各位置でのコントラストを画像の輝度振幅情報から取得する方法である。光学設計ソフトによる検証実験として、イメージセンサに一定の傾きを付与した状態でチャートを傾けながら撮影しボケ量の画像分布をその都度求め、これが最も水平になるときのチャートの傾き角が、付与したセンサの傾き角との間でシャインプルーフの原理が成り立つことを確認した。 画像の位相情報によるセンサ傾き測定法の確立: 正弦波チャートに対する撮影画像の輝度分布をフーリエ変換することで位相成分を抽出し、その画素間差分をとることにより画像各点での局所周波数を計算するプログラムを作成した。光学設計ソフトを用いた検証実験では、画像の局所周波数分布が最も水平になるときのチャート傾きがセンサ傾きに一致することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
光学設計ソフトによるシミュレーション実験ではあるが、画像の振幅および位相情報を用いたセンサ傾き計測に関する基礎理論の有効性が確認できた。次年度に予定していた位相情報を用いた方法を本年度に前倒しで検証できた点は当初の計画以上の成果である。カメラ撮影実験での検証についてはまだ着手できていないが、そのための実験装置の試作を本年度中に行えたことは次年度への準備として評価できる。 当初は、エッジチャートによるボケ度合いの測定だけでセンサ傾きが検出可能なことを想定していたが、シミュレーションでは有効性を確認できたものの、高精細液晶ディスプレイをチャート提示に用いたカメラ撮影実験では、測定結果に画素構造が大きく影響することが判明したため、影響を受けにくい正弦波チャートによる方法についても検討を行った。これは当初の方針を変更した部分である。
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今後の研究の推進方策 |
エッジチャートによる方法では片ボケを高感度に検出可能なことがシミュレーション実験で確認できたが、正弦波チャートを用いた方法は画像の位相情報も同時に測定可能であるとともに、チャート提示に利便性の高い液晶ディスプレイが利用でき実用的に有利であることが本年度の研究で明らかになった。 そこで次年度以降は、カメラおよびディスプレイの位置や傾きを任意に調整可能なステージ(本年度試作済み)を用いた撮影実験においても提案手法の有効性を検証予定である。その際、振幅情報によるボケ検出は感度が低い可能性があるが、正弦波チャートの周波数を高くしたり画角を広げるなどの工夫を検討する。画角が広くなるとディストーションの影響が無視できなくなるため、画像補正を行った上でセンサ傾きを検出する方法についても検討する。
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