研究課題/領域番号 |
21K11936
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
健山 智子 滋賀大学, データサイエンス教育研究センター, 准教授 (90550153)
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研究分担者 |
野崎 真也 琉球大学, 工学部, 准教授 (00390568)
陳 延偉 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (60236841)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 顔面浮腫疾患 / 3次元顔面形態観測 / 3次元標準顔形状 / 点群解析 |
研究実績の概要 |
顔面浮腫は,通常時の顔の状態と比較すると,頬周辺が赤みを帯びて,頬形状の下方向への膨張が視認される症状である.この疾患における発症要因は様々であるが,形成外科分野においては顎矯正手術後,切離・剥離から派生する傷などが要因として高い頻度で確認される.現状,顔面浮腫の診断は,臨床医の直接視診・触診によって行われ,経過観察に基づいて投薬治療を行うことが主であった.このため,医師ごとの診断が異なる可能性が高く,計算機による客観評価が可能な診断支援システムの確立が求められる. 上記の課題解決について,本研究では,①3次元顔形状情報観測とデータベースの構築,②正常と疾患奨励間における形状違いの観測と可視化,③①,②の成果にもとづく,顔面浮腫の計算機診断支援を目指す.本研究では,まず研究初年度(2021年度)は,①の課題についての研究に焦点を置いた. ①について,顔面浮腫疾患と健常者間における顔形状の違いについて整備されたデータベースは本研究の事前研究で調査・確認したところ,国内外において存在していない.関連研究から,臨床機関ごとに顔面形状観測のため観測デバイスが異なっているだけでなく,その観測手法も異なっていることが大きな要因のひとつである.また,症例そのものの非常に少ないためである.この課題について,初年度は,民生用RGB-Dデバイスから顔面形態観測の可能性について,データ収集,解析を行った.本研究では疑似浮腫データベースを構築するため,Kinect V2を用いてデータ取得を行った,
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要で記述しているように,現在,顔面浮腫疾患と正常時における顔形状の違いについてのデータベースは本研究の事前研究で調査・確認したところ,存在していないことが分かった.その理由として,顔面浮腫における形態観測は各施設ごとで,高価なハンディスキャナで手動で取得しているためであり,データ間の正規化などが行われてなく,データが整備されていない.この解決のため,本研究では,まず,顔面形態変化の解析に必要なデータベースの構成が必要であり,今年度はこの研究に着手した. 研究デザインとして,1. 顔面形態観測のためのデータ取得システムの構築,2.疑似正常顔と疑似浮腫顔間における顔面形態変化の可視化,の内容における仮説を設定し,その評価を可視化から行った.1.のデータ取得では,RGB-DセンサーKinect V2,Real senseによる撮像システムを構築した. また,先述の通り,本研究の対象となるデータベースが存在していないことから,本研究ではまず,先行して疑似浮腫データベースを構成している.データベースの構成では,研究に協力いただいた健常者(20代男性15名)に対し,正常時と頬を膨らました状態の2パターンを取得する.前者を疑似正常,後者を疑似浮腫疾患としてその変化を確認するための疑似浮腫データベースを設計した. 2021年度はこの疑似浮腫データベースを構築し,臨床現場からのフィードバックを受ける予定であったが,新型コロナウイルス感染拡大のため,データ取得が思うようにいかなかった.そのため,「やや遅れている」と評価する.2022年度は臨床機関と連携し,また共同研究者間との密接な研究協力のもと,遅れているデータベースの構成を行う.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は,新型コロナウイルス感染拡大防止のため,当初より検討していたデータベースの構成が思うように行えなかった.しかし,汎用デバイスでの情報取得環境として,Kinect V2による設計・構築を行い,実際にその取得に対する検証を行っている.また,本研究と同時に現在,Relsenseによる環境構築を進めている.これは,今後多くの施設間での利用を目指し,各施設間で取得されたデータを融合することを目的としている. 2022年度は2021年度に検討した環境で健常者のデータセット,また臨床現場での取得を行い,データベースの整備,そして臨床現場と疑似浮腫データベース間での性質などの評価をおこなう,
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次年度使用額が生じた理由 |
研究初年度の計画は,主に3次元の顔形状情報の取得を予定していた.この手法は,実際にこれまで顔面における既往歴のない健常者,あるいは顔面浮腫の患者を検討していた.しかし,2021年度は新型コロナウイルス感染拡大防止のため,解析のためのデータ取得および共同研究での対面打ち合わせや対外発表などがすべてキャンセルとなった.そのため,2022年度に本研究の延長を申請し,2021年度に予定していた,データ取得や解析を臨床現場とも密接に行い,学会発表などでも発表し,本研究の対外発表を広げる. また,本研究で当初購入申請をしていた,ハンディスキャナを独立基盤形成支援にて購入を行い,その予算をが今年度の使用額との相違として発生した.
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