本研究では,特に音響および人体に関連する低周波帯の多次元低周波時系列データを対象に,次元間のモデル構造の違いを考慮したパターン認識モデルを構築することに成功した. 提案モデルは音響センサデータと電波センサデータの両方に適用され,その両方において有効性の確認を行うことができた.音響データにおいては,特定の周波数帯の変動を捉え,深層学習モデルに適用することにより,その結果の有効性を確認できた.応用例として楽器演奏時の同時演奏された楽器音の推定問題に提案モデルを適用し,その有効性の確認に成功した.一方,電波センサデータにおいては,マイクロ波ドップラーセンサを用いて信号のモデリングを詳細に行い,それらのセンサ間,IQ信号間での変動について調査を行い,従来研究では困難であった心拍・RRIや血圧の遠距離からの検出が可能となるモデルの構築を行うことができた. この研究成果に基づき,現在までに4本の論文を学術雑誌に投稿しており,そのうちの一部はすでに採択が出ている.また,2023年度には国内外の学会で計6件の口頭発表を行い,計算機統計分野,生理人類学分野での情報共有に努めた. 当研究は低周波データを用いたパターン認識の可能性について検討したものであり,特に高次元の多次元データ解析の新たな手法について示すことができたと考えられる.研究期間中の成果に基づき,今後もモデルの精度向上と応用範囲の拡大を目指し,さらなる研究を進めていく予定である.
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