研究課題/領域番号 |
21K11944
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研究機関 | 拓殖大学 |
研究代表者 |
渡邊 修 拓殖大学, 工学部, 教授 (30384697)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | HDR画像 / 画像圧縮 / JPEG / JPEG XT / JPEG 2000 / HTJ2K |
研究実績の概要 |
高性能ディスプレイの普及に伴い,HDR画像の画質評価の重要性は増す一方で,HDR画像の圧縮方式にはJPEG XT以外の方式も用いられている.映画や動画配信サービスに代表されるエンターテイメントの領域では,4K UHD(3840x2160, 10 - 12bit/pixel)画像が主流であり,そのマスタフォーマットにはJPEG 2000方式が用いられている.2019年に,高速な処理の実現を目的とするJPEG 2000 Part 15 (High-Throughput JPEG 2000, HTJ2K) が規格化され,JPEG 2000をこれまでのアプリケーション以外にも採用する動きが活発化している. そこで,本研究においても,JPEG 2000,特にHTJ2Kによって圧縮された符号化画像を対象にした画質評価指標を開発することを目的に追加し,いくつかの成果を得た. 1. まず,HTJ2Kに準拠したソフトウェアコーデック(符号化・復号器)の開発である.画質評価指標を開発する際には,符号化・復号化処理の詳細,特に,DWTや量子化処理の実装精度をコントロールできる環境が求められるため,新たにオープンソース実装を開発した.すでに存在するオープンソース実装は,DWTを浮動小数点処理で実装しており,ハードウェア化の際に問題が発生することが予想される.新たなコーデックを開発した理由は,本研究ではハードウェア化された環境でも実用可能な画質評価指標の開発を目論んでいるためである.この成果はIEEE主催の国際会議GCCE 2021にて発表した. 2. 2つめの成果は,HTJ2Kのエンターテイメント向けアプリケーションである動画像コンテンツのIPベースネットワークを介した制作および配信における,HTJ2Kの特長について詳細な解析を行った.これはオープンアクセスジャーナルに掲載された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ソフトウェアコーデックの開発を通じて,コーデックのハードウェア化を意識した場合において重要となる固定小数点演算と,非可逆圧縮時の量子化処理について,これらが最終的な画質に与える影響についての詳細な知見を得ている.以上の知見は, JPEG XTではなく,JPEG 2000,特にHTJ2K方式向けではあるものの,JPEG XT方式に対しても展開が可能であり,今後は,得られた知見と開発したソフトウェアを用いて,JPEG XTおよびJPEG 2000両方式に合わせた画質評価指標の開発にスムーズに取り掛かることができると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の課題である,圧縮された画像を完全に復号することなく,高精度な画質評価を行うための指標の開発には,非可逆符号化時に使用される各種パラメータの値と,既存の客観画質指標との関係,さらには主観画質との関係を明らかにする必要がある.現在のところ,JPEG 2000に関する上記関係を得るための準備は整っていると考えている.今後は,まず,JPEG 2000,特にHTJ2K方式における画質指標開発を第1の目標とする. 第2段階として,JPEG XT符号化方式における上記関係を明らかにし,JPEG XT向けの画質評価指標を開発する. 最終段階として,特定の符号化方式に依存しない指標の開発に着手できれば,圧縮画像のためのユニバーサルな画質評価指標の実現に貢献できると考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大を受け,各種国際会議や,ISO/IEC SC29/WG1国際会合への参加に伴う旅費支出が不可能になったことが主な要因として挙げられる.また,主観画質評価のための機材についても,3密を避けた形での実施が難しいと判断し,今年度における準備を延期した.
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