本研究では,ランダム構造を持つフォトニック結晶フィルタを開発し,モノクロイメージャに位置合わせをせずに搭載するだけで,単一カメラかつ単一露光撮影で分光・偏光・RGB画像を撮影できるイメージング方法を目指している.本年度は深層学習を用いたデモザイク手法の開発を中心に行った.ランダム構造によるフィルタは空間的周期性を持たないため単純な畳み込み層の組み合わせでは学習が収束しないが,多次元畳み込み層と残差学習の深層化および教師画像の拡張によって,100×100画素を超えるランダムフィルタに対するデモザイクネットワークを構築できることを確認した.実験の結果,非学習ベースによるデモザイクと比較して大幅な復元画像の画質向上が確認された.検証に要する時間は数秒であり,プログラムを最適化し学習済モデルを実機に搭載することで,より高速に分光偏光イメージングが行える可能性がある.また,ランダムフィルタのパターンについて,近年は単一図形で非周期的な充填が可能であるパターン(hatパターン)が発見されており,そのパターンによって充填されたフィルタは従来のボロノイ図によるパターンよりも優位性があることも確認された.このパターンはフォトニック結晶製造時の電子線描画のデータを変えるだけで対応可能であり,フィルタの材料および製造プロセスを変える必要がないため,製造コストに一切影響を与えずに画質が改善する有効な手段となる.パターン設計およびデモザイク手法のそれぞれについては,研究期間中に採録まで至らなかったものの,現在,論文投稿準備を進めている.
|