本年度は,これまでに構築したMRIに基づく肝線維化ステージ判定システムの診断精度改善とシステムの自動化に関する検討を実施した。従来手法では単一の畳み込みニューラルネットワークによるネットワーク構造をとっており,選択したMRIスライスの分割画像パッチに対して画像パッチ単位の肝線維化ステージ判定を行うシステムであった。本検討においては,畳み込みニューラルネットワークを並列に配置して交換学習を行うネットワーク構造に変更し,さらにパッチ単位ではなく,被診断者単位の肝線維化ステージ判定を行うネットワークを後段に配置した。その結果,肝線維化ステージ判定の精度向上が実現し,被験者単位のステージ判定が可能となった。この成果については国際学会IoTaIS2023で発表を行った。 さらに別のアプローチとして,MIL(Multiple Instance Learning)による学習法を利用したネットワーク構造による肝線維化ステージ判定についても検討した。これにより,ネットワーク規模の削減とさらなる精度向上が実現した。これらのステージ判定法においては,新たに処理速度の高速化手法を組み込んだネットワークの判断根拠可視化手法RISEにより,判定の根拠をヒートマップにより可視化することが可能であり,診断補助に向けた画像表示についても応用が可能であることも確認している。 また,肝線維化ステージ判定システムの完全な自動化についても検討を行った。これまで手動で行っていたMRIの診断対象スライスの選択において,肝臓領域をU-netによる領域分割により判定し,診断に適したスライスを選択する手法を提案した。これにより,従来は手動で行っていた診断対象スライスの選択と,ステージ判定法の入力とする画像領域の抽出を自動化することが可能となった。この結果については国内学会で発表をおこなった。
|