研究課題/領域番号 |
21K11970
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研究機関 | 神奈川工科大学 |
研究代表者 |
海野 浩 神奈川工科大学, 情報学部, 助教 (40387080)
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研究分担者 |
上平 員丈 神奈川工科大学, 情報学部, 教授 (50339892)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 情報ハイディング / マルチメディア情報生成 / 透かし |
研究実績の概要 |
第2年度は,初年度に行った形態Aに関する第二の研究の実験結果に基づいて,高密度の情報の信号を実物体上の一定の領域に付与する場合における不可視性と可読性の実験を行った.実験では,情報を付与する位置を以前の研究で用いた低密度パタンと同じ位置とし,高密度の情報をチェッカーパタンとした.実験変数はこのパタンを構成する正方形の一辺の長さLとした.このLを2画素から24画素まで2画素刻み(Lの実物体上の値は1.62 mmから19.44 mmまで1.62 mm刻み)で変化させた. 不可視性の実験の結果,実験で用いたすべてのLに対して不可視性は90%以上であった.可読性の実験の結果,Lが14画素(実物体上の値は11.34 mm)以上のとき,ノイズを削減した画像においてチェッカーパタンを獲得できた.これらの結果から,原色成分変調法を用いたとき,不可視性と可読性の両方の条件が同時に満たされるLが明らかになった. 形態Cでは,光照射では読み取り易さを優先して高コントラストのパタンを照射し,1)まず撮像画像中のパタンを認識し,2)認識後にパタンは除去し,3)その後,認識した情報を不可視性の高い電子的方法で撮像画像中に埋めなおす.3)についてはすでに実現性を確認しており,今年度は1)の撮像画像中のパタンの認識技術を実験により検討した.実験ではパタンとしてQRコードを用いた.パタンの種類に限らずパタンは被写体と重畳されるため通常の方法では認識が不可能である.本研究では,敵対的生成ネットワークの一種である pix2pix型のGANを用いてQRコードの認識を試みた.実験結果から,GANによりQRコードを撮像画像中から抽出することが可能であること,さらに抽出されたQRコードはQRコードリーダにより認識可能であることが確認でき,本方法の実現性を実証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実施計画の形態Aについて,高密度の情報の信号を実物体上の一定の領域に付与する場合の不可視性と可読性の実験を行った.実験により,この場合における不可視性と可読性の両方の条件が同時に満たされるL(チェッカーパタンを構成する正方形の一辺の長さ)の範囲を明らかにした. 次に,高密度の情報の信号に対して,その可読性を改善する方法を検討した.具体的には,情報の信号を付与する方法として,色差成分を変調する方法を提案した.付与された情報の信号の可読性に関する問題点を明確にし,さらに不可視性と可読性に関する基礎的な知見を得るために,フラットパネルディスプレイ(FPD)に表示される画像に情報を付与する技術において,この色差変調法を用いたときの不可視性と可読性を調べることとした. 可読性の実験の結果,従来の原色成分変調法と比較して,提案手法を用いたときに獲得された情報の信号において,それに含まれるノイズは少なかった.すなわち提案手法により可読性が向上することが明らかになった.また不可視性と可読性の両方の条件が同時に満たされる色差成分の輝度の変調振幅値の範囲を明らかにした.この実験結果に基づいて,高密度の情報の信号を実物体上に付与する場合において,色差成分変調法を用いたときの不可視性と可読性の研究を次年度に行う. COVID-19のため予定していたパタン除去の実験ができなかった.その代わり被写体像と彫像されたパタンを認識する技術を前倒しして確立できた.
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今後の研究の推進方策 |
第2年度の研究成果に基づいて,第3年度は次のように研究を推進する. まず実施計画の形態Aにおいて,可読性の改善が見込まれる色差成分変調法を用いて,情報の信号を実物体上に付与する場合における不可視性と可読性の実験を行い,それらの性質が同時に満たされる色差成分の輝度の振幅変調値の範囲を明らかにする. 続いて形態Bについて,印刷画像へ高密度の情報を付与する方法を研究する.すなわち,光に含まれた情報の信号が,撮影・印刷の各段階で消失することなく,不可視のまま印刷画像に含まれているかを検討する. 形態Cについては,撮像画像中で被写体像に重畳された可視パタンを除去する技術を確立する.これまでに周期パタンについてはGANにより除去できることを明らかにしているので,QRコードなどの周期パタン以外の他のパタンについても同様にGANで除去できるかを実験により検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19のため実験が予定より遅れ,成果発表を予定していた国際会議に投稿できず,次年度へ延期した.同じくCOVID-19のため,国内会議はオンラインで参加することとした.これらの理由により旅費の支出額は生じなかった. 人件費・謝金として実験補助・データ整理の費用を当初見積もった.しかしCOVID-19に対応するため,実験補助・データ整理の要員の採用はとりやめた.このためその支出額は生じなかった. これらの差額の合計額が次年度使用額として生じた.この額は次年度の旅費,参加費,および論文校閲費に充てることを計画している.それぞれ旅費80万円,参加費16万円,論文校閲費15万円を計画している.
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