研究課題/領域番号 |
21K11976
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
岩永 光一 千葉大学, デザイン・リサーチ・インスティテュート, 教授 (70160124)
|
研究分担者 |
石橋 圭太 千葉大学, デザイン・リサーチ・インスティテュート, 准教授 (40325569)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 擬似触力覚 / 肘関節屈曲動作 / 事象関連電位 / 眼球運動 |
研究実績の概要 |
視覚情報の変化によって誘発される触覚や力覚の錯覚である擬似触力覚について、その発生メカニズムを検討することを目的として研究を行っている。本年度は以下の2点について検討を行った。 1.肘関節屈曲動作によるカーソル操作時の擬似触力覚の定量化:これまでの検討では、通常のコンピュータ作業に準じたマウスによるカーソル操作を対象にして、マウスを操作する腕に生じる擬似触力覚を定量化した。しかし、擬似触力覚発生時の筋電図や脳波等の生理指標を計測するためには、擬似触力覚が生じる身体部位の動作を一定に統制する必要がある。検討では、肘関節の屈曲動作によってコンピュータ画面上のカーソルが直線的に移動するシステムを構築し、この時のカーソルの挙動変化によって擬似触力覚が発生することを確認し、その大きさを評価することができた。 2.眼球運動の抑制が疑似触力覚の発生に及ぼす影響:脳波の事象関連電位を用いて擬似触力覚発生時の脳活動を評価することを計画しているが、脳波の計測には眼球運動による電位変化がノイズとして混入することから、被験者にはできるだけ眼を動かさないようにすることが求められる。一方、擬似触力覚は視対象の挙動の変化によって誘発されることから、運動する視対象を注視することによる眼球運動が生じる。そこで、眼球運動を意図的に抑制した状態で擬似触力覚が発生するか否かについて検討した。その結果、眼球電図によって眼球運動がないことを確認した場合でも、擬似触力覚が発生することが明らかになった。眼球運動を抑制しても擬似触力覚が発生することから、眼球運動由来のノイズを十分に排除した脳波計測が可能である。一方、これまでに行なった実験結果との比較から、眼球運動の抑制によって錯覚量が小さくなる可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究計画として実験系の構築に関する検討を中心に行い、研究実績の概要に記した成果を得ることができたのは、一定の進捗であると評価している。しかし、肘関節屈曲動作によるカーソル操作時の筋電図および事象関連電位の計測を確認するまでに至らなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、擬似触力覚発生時に筋電図、脳波事象関連電位、眼球電図などを同時に計測する実験系の構築を当面の目的として推進する予定である。 当初の研究計画では、視線追跡装置(アイマークレコーダ)による眼球運動の計測を予定していたが、現在の研究経費から十分な精度を確保した装置の導入が困難であるため、眼球電図の計測を導入することとした。眼球電図の導入によって眼球運動の有無とその相対的な大きさについては客観的に評価することが可能である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究計画段階では視線追跡装置の導入による眼球運動の計測を計画していたが、採択された研究経費では十分な精度を確保した装置の導入が困難であることから、計画を変更し眼球電図の計測を行うことにしたことにより次年度使用額が生じた。2021年にアメリカのオレゴン州立大学にて開催される予定であった国際生理人類学会議が、新型コロナウィルスの蔓延によって開催が延期になり、2022年に開催される方向で検討が行われている模様であり、研究成果の発表のための海外旅費として使用を計画している。ただし、コロナウィルスによる影響が継続し参加が困難な場合には、異なる動作による実験系を構築するために力覚提示装置や視覚提示装置などの追加導入に充当する予定である。
|