遠赤外線画像を用いたヒトの口呼吸の非接触計測の実現に向けて,本年度は以下の課題に対する検討を行った. はじめに,申請者らが考案した手法の自動化に必要不可欠な,遠赤外線画像上の口腔の自動検出を試みた.具体的には,遠赤外線画像に加えて可視光画像を用いることで,口腔を含む領域を厳密に抽出する手法の考案と評価を行った.呼吸の仕方を変えた条件下で計測を行った結果,良好な精度で口腔を検出できることを確認した. 次に,呼気・吸気の流速と気温の変化速度の関連性をみるため,これらをスパイロメータと熱電対センサを用いて同時に計測できる環境を構築した.実験の結果,呼吸の仕方によらずに呼気・吸気の流速と気温の変化速度に強い正の相関が見られた.この結果より,呼気・吸気の気温の変化速度は,口呼吸の流速を推定する上で有用な特徴量となりうることを確認した. さらに,遠赤外線画像上の口腔の表面温度と呼気・吸気の気温の関連性,および,抽出する口腔領域の形状による差異をみるため,これらを熱電対センサ,遠赤外線カメラ,ならびに可視光カメラを用いて同時に計測できる環境を構築した.実験の結果,一部の実験参加者について,やや強い正の相関が見られる結果となった.この結果より,口腔の表面温度は,口呼吸における呼気・吸気の気温を推定する上で有用な特徴量となりうることを確認した. 以上の結果より,遠赤外線画像を用いることで,口呼吸における呼気・吸気の流速を自動かつ非接触で推定できる可能性が示された.
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