本研究では,作業者の技能レベルに適応した支援に加え,自発的な技能習得を促す要素を支援システムに組み込むことで,高い貢献感を得られる技能レベルに迅速に到達することを目的としている.2023年度は以下を実施した. 1)前年度までに収集した迷い状態を反映する手の位置と視線遷移に関するデータセットを用いて分類器の精度向上を図った.視線のみを用いる場合は,これまでは関心領域(AOI)間の遷移の順序を中心に特徴量化していたが,新たに時間に関する特徴量を導入し,その有無による精度への影響を10分割交差検証により検証し,時間情報が効果的であることを明らかにした. 2)手の位置と視線情報を統合し,迷い無し,部品探索および取り付けの迷い(それぞれ強/弱)の5つのクラスに分類するための階層型分類構成と,分類の信頼性を向上するための「棄却オプション処理」を導入し,実時間動作するシステムとして実装した.ユーザ評価の結果,適切な強度での棄却オプションにより判断が困難な分類結果の強引な提供を避け,作業者に違和感を持たれずに適切な分類結果を提供可能であることを確認した. 3)7箇所に装着した慣性センサから23種の日常行動中に収集されたデータセットを用いて,作業状態認識のための認識モデル(深層学習ベース vs 機械学習ベース)およびセンサ組み合わせを検証し,十分なデータ量がある場合には深層学習ベースの手法が精度と処理速度の点で有効であることを確認した. 4)自立感を与えるための支援方法としてのエージェントによる視線誘導に関して,前年度に開発した3DCG版に,上記2)で開発した「実時間迷い判定」機能の統合を試みた.また,複合現実感技術によるエージェントへの愛情醸成の可能性を検証した. 5)貢献感の醸成に繋がると考えられる自己効力感の測定に関しては,前年度までに収集したデータを用いて多変量回帰モデルの検討を進めた.
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