研究課題/領域番号 |
21K11996
|
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
高田 直樹 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 教授 (50290713)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 三次元ディスプレイ / 時空間分割電子ホログラフィ / 重み付きバイナリ計算機合成ホログラム / 階調表現 / リアルタイム再生 |
研究実績の概要 |
本研究では,膨大な物体点で構成された階調を持つ三次元物体の高精細なリアルタイム三次元動画再生を実現することを目的とする.令和3年度は,次に示す①~③について行った. ① Ampareアーキテクチャに適した計算機合成ホログラム(CGH)の高速計算アルゴリズムの開発.② 費用対効果とスケーラビリティに優れたマルチGPUクラスタ電子ホログラフィシステムの開発.③ 階調を持つ膨大な物体点で構成された三次元物体の高精細なリアルタイム三次元動画再生プログラムの開発. ① において,最新のAmpereアーキテクチャのGPUは,これまでのGPUとは異なり,CUDAコアに比べてSpecial Function Unit(SFU)の数が少なくなっている.そのため,SFUの演算量を低減させた新たなCGH計算アルゴリズムを開発した.②のシステムでは,CGHの超高速計算を行うCGH計算部と,計算されたCGHを空間光変調器に表示するCGH表示部からなる.本研究において,CGH計算部に使用するPCに安価な汎用マザーボードを用い,6枚のGPUを搭載することに成功した.従来に比べPCの台数を半減させることができた.さらに,省スペース性,費用対効果,簡便性,保守性において著しく改善することができた.また,①で開発したCGH計算アルゴリズムを,開発したマルチGPUクラスタに実装した.GPUにNVIDIA GeForce RTX 3080 10GBを用いて計算性能を評価した.その結果,振幅型CGH計算において,12枚のGPUにより約50万点からなる三次元物体のリアルタイム再生に成功した.③においては,重複計算を省いたアルゴリズムを適用し,マルチGPUクラスタにより,18万点からなる階調を持つ三次元物体のリアルタイム再生に成功した.また,マルチGPUクラスタで階調表現法と時空間分割法を併用するプログラムを開発した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画において,令和3年度は,次の①~③に示すように,本研究で使用するシステムとプログラムの開発を予定していた. ① Ampareアーキテクチャに適した計算機合成ホログラム(CGH)の高速計算アルゴリズムの開発.② 費用対効果とスケーラビリティに優れたマルチGPUクラスタ電子ホログラフィシステムの開発.③ 膨大な物体点で構成された階調を持つ三次元物体の高精細なリアルタイム三次元動画再生プログラムの開発. ①において,SFUのボトルネックを解消した新たなCGH計算アルゴリズムを開発した.振幅型CGHにおいて1枚のGPU (NVIDIA GeForce RTX 3080 10GB)で約4万点からなる三次元物体のリアルタイム再生に成功した.②では,CGHを計算するPC(CGH計算部)と計算したCGHを表示するPC(CGH表示部)からなるシステムを開発した.CGH計算部において,安価な汎用マザーボードを用いて1台のPCに6枚のGPUを搭載し,従来に比べPCの台数を半減させることに成功した.そして,パイプライン計算アルゴリズムを実装し,優れたスケーラビリティを実現した.③では,重み付きバイナリCGH(BW-CGH)をビットプレーンとして用い,階調を持つ三次元物体を再生する「階調表現法」と,高精細な三次元映像の再生を実現する「時空間分割法」を併用するプログラムを開発した.本研究で用いる階調表現法および時空間分割法は,研究代表者らが提案した方法である.また,階調表現法において,物体点を輝度値によってグループ分けすることで重複計算を省くことのできる新たなアルゴリズムを開発した. 以上のように,令和3年度において,当初計画通りに研究を進めることができた.このことより,「おおむね順調に進展している」と評価した.
|
今後の研究の推進方策 |
令和4年度は,令和3年度に開発したシステムおよびプログラムを用いて,次の①~③を行う予定である. ①ヘテロ型GPUクラスタによるリアルタイム電子ホログラフィシステムの開発.②膨大な点群からなる階調を持つ三次元物体の高精細なリアルタイム三次元動画再生.③ポータブルホログラフィックプロジェクタを用いた階調を持つ三次元映像の投影.
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では,令和3年度にGPUを購入し,マルチGPUクラスタシステムを新たに構築する予定であった.しかし,半導体不足の影響もあり,コンピュータ部品およびGPUの価格が高騰した.また,AmpereアーキテクチャのGPUにおいて,マイナーチェンジや様々なラインナップが登場した.しかし,いずれも,現在所有しているNVIDIA GeForce RTX 3080 10GBに比べ,コストパフォーマンスにおいて劣っていた.そのため,新しいGPUの購入を次年度に見送ることにし,現在所有しているGPUを用いて低コスト・省スペース型マルチGPUクラスタシステムを構築することにした.新たなGPUは,次年度に購入する予定である.なお,研究計画への影響はない.
|