研究課題/領域番号 |
21K12000
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
茂木 雅臣 群馬大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (40646189)
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研究分担者 |
三瓶 紗弥香 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (20622301)
石垣 陽 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 特任准教授 (50723350)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | セミデジタル補聴器 / 途上国支援 / 遠隔フィッテイング / 加齢性難聴 / SDGs |
研究実績の概要 |
新規補聴集音器のアイデアを学会等にて収集し、プロトタイプを作成した。汎用オーディオコーデックICを採用したセミデジタル回路を試作し、2ccカプラや疑似耳等により特性を評価改善する。指向性マイクロホン、ノイズ除去(NR)、チャンネル毎のノンリニアな利得パラメータ調整、ダイナミックレンジ圧縮など、補聴器に求められる基本機能を実装した。 加齢性難聴者の補聴器使用状況に関する臨床データを収集した。社会的フレイルの一要素である独居に注目し、独居が語音成績および補聴器の装用効果に与える影響について検証した。68例が抽出され、独居群は19例、非独居群は49例であった。平均純音聴力閾値(P= 0.0436)と裸耳語音弁別能(P= 0.0025)は、独居群で有意に悪かった。重回帰分析にて独居が聴取能と装用効果に与える影響を評価した。純音聴力の影響を排除しても、独居(P=0.0119)は有意に裸耳語音弁別能に負の影響を与える因子であった。一方で、裸耳語音弁別能の影響を排除すると、独居は装用時語音弁別能とは関連を認めなかった。さらに、装用時語音弁別能の影響を排除しても、独居(P=0.0324)は独立して補聴器装用の満足度(IOI-HA)を悪化させる因子であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の受診控えにより、本デバイス装用効果判定のための軽中度難聴を有する被験者の収集が難しかった。
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今後の研究の推進方策 |
実耳測定装置での特性評価に加え、55dBHL程度以下の軽中度難聴を対象に処方・試聴を行い、朗読音声による一対比較試験等により音質を評価する他、直接適合度をHAPI, COSI等の標準質問紙で順序効果に配慮しながら評価し、機能改善とレベルアップを図る。 高齢難聴者のフレイル予防に向けた新規難聴支援プログラムを構築する。これによりヘルスリテラシーを高め、補聴器装用に繋げ、常用者を増やす。さらに、聴覚リハビリテーション(リハ)の最適化に加え社会参加も促すことにより難聴起因のフレイルを予防することを目標とする。 補聴器常用に至るまでの複数のフェーズを識別した、(1)フェーズ毎の障壁を明確化する予備調査と(2)仮説検証に基づいた新規介入方法の検証で構成する。 初めに、難聴起因の社会的フレイルをスクリーニングできる日常診療で使える質問紙の開発 を行う。その上で、(1)フレイルが難聴ヘルスリテラシーに与える影響の実態調査、(2)フレイルの程度が補聴器を用いた聴覚リハの効果に与える影響を実態調査する。 検証の結果、社会的フレイルにある高齢難聴者において、(1)難聴や補聴器に関するヘルスリ テラシーが低い、及び(2) 社会参加の機会が少なく、聴覚リハ後の聴取能と満足度が低いこと,が明らかになると予想される。 その問題解決に向けて地域住民が主体となった、(1)難聴や補聴器に関するヘルスリテラシー 向上プログラム、及び(1)社会参加促進プログラムを構築する。続いて、市町村リハ支援セン ターや地域のフレイル一次予防の場の協力を得ながら、専門職が啓蒙活動として(1)を行い、 情報の正確性が改善するかを検証する。また、補聴器外来にて行う聴覚リハに加え、鍵とな る地域住民が実施する(2)を併施し、装用効果と補聴器常用率および社会的フレイルが改善するかを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
発注した機材が今年度中に届かなかったため。次年度に同機材分の経費を計上する予定である。
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