研究課題/領域番号 |
21K12027
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
安田 耕二 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 准教授 (70293686)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 機械学習 / 化学反応 / 有機遷移金属 |
研究実績の概要 |
原著論文を参照しながら、実験で報告された反応式から素反応を推定し、機械学習可能なデータベースに整理した。US patentから収集された公開データから約17万個、CAS(アメリカ化学会)から提供頂いた反応から約2万個の素反応が準備できた。素反応ごとに、種類(酸化的付加、還元的脱離など)や結合変化(できる/切れる結合)を記録し、酸化反応など単純なものを除き、学習用データセットとした。 出発物を与えると、結合変化を予想するグラフニューラルネットを作った。各素反応の出発物と生成物の対を与え、教師付きで学習を行った。予測精度の高いネットワーク構造を探した。結合の種類を考慮するいわゆるNNConvという畳み込みが有効だった。最適化の結果、素反応のテストデータのうち、95%を正しく予測できた。このグラフニューラルネットは、既知の有機遷移金属錯体の反応パターンを、とても良く「覚えている」と言える。 既知の反応データベースを検索するのとは異なり、未知だが類似した反応でも予測できる点が特筆される。また、ニューラルネットによる画像認識などと同様に、人が判別アルゴリズムや特徴量を設計する必要が無い。類似反応の検索や提案、計算機シミュレーションによる有望な反応の自動計算、に応用可能だと思われる。データが準備できれば、既知の有機遷移金属反応を全て学習させることも不可能ではないと思われる。 以上の結果をまとめ、国内学会や国際学会で発表した。論文にまとめ投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通りに進展している。研究用のツール類の開発も進み、類似や派生研究を進めることも可能になった。この分野の発展は速いので、タイムリーに学会や論文発表をすることが特に必要である。グラフニューラルネットが反応をどのように「理解」しているか(いわゆる説明可能性)については、まだ良く分からない。
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今後の研究の推進方策 |
光学異性体など、触媒分野で興味を持たれている課題に応用することを考えたい。計算機シミュレーションによる有望な反応の自動計算など、情報技術の発展により特に恩恵を受ける分野を推進したい。人によるデータ確認(キュレーション)にまだ手間がかかる。機械学習でこれを軽減する工夫をしたい。
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