研究課題/領域番号 |
21K12035
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
高橋 寛 岩手医科大学, 薬学部, 教授 (40767513)
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研究分担者 |
岡崎 光洋 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 特任研究員 (80297944)
波多江 崇 中国学園大学, 公私立大学の部局等, 教授(移行) (30331028)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ポリファーマシー / レセプトデータ / 後期高齢者 / 処方提案 / 調剤報酬明細書 |
研究実績の概要 |
1.日常業務における減薬と関連した薬学的疑義照会事例の収集とデーターベース化は、未着手である。 2.レセプトデータに基づく介入結果のデーターベース化とスクリーニングツールの評価の検討は、ポリファーマシーの2つのスクリーニングツールの比較検討を75名の処方を対象に行った。STOPP criteria ver2(STOPP-C)では、75名中75名が該当し、該当項目数は1人当たり4件であった。STOPP-Jでは、75名中71名が該当し、該当項目数は1人当たり2.5件であった。STOPP-Jはチェック項目が少ないことから薬局においては、STOPP-Jでも検出が可能であり、有用であると結論付けた。この結果は、日本薬学会東北支部会にて発表した。 3.研修会や勉強会を通した薬学的スキルアップの向上は、岩手県薬剤師会において研修会を2回(10月、11月)Web上で開催した。令和3年10月1日(金)「ポリファーマシー対策の一工夫」(参加者:209名)、令和3年11月4日(木)「高齢者のポリファーマシー対策」(参加者:249名)。 4.岩手県における後期高齢者のポリファーマシーの現状は、令和2年度4月~6月の3ヶ月間、連続して薬剤を10剤以上投与され、かつ複数の医療機関を受診し、薬効分類に重複があった4264名の患者の電子レセプトデータを対象に解析を行った。薬局を1つに絞っている患者は約4割であり、全体の半数の患者は受診した医療機関の近隣の薬局を利用していることが明らかになった。一方で、利用薬局数が少ない方が、投与薬剤数及び内服薬数は少なかった。この結果は、142回日本薬学会および第6回日本老年薬学会学術大会(名古屋)にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1. 計画当初、薬学的疑義照会事例の収集を検討していたが、手が回らず未着手である。 2.スクリーニングツールの評価の検討は、薬局でもSTOPP-Jが活用できることがわかった。また、実際の処方を用いて検討したところ、2つのスクリーニングツールでチェックされる項目(内容)に違いがあることもわかった。75例を対象にしているため、対象数を100例程度まで増やしたい。また、レセプトデータに基づく介入結果のデーターベース化に関しては、令和3年度4006名を対象に、STOPP-J対象薬を組み込んで、服用薬剤の郵送者の目視点検を行い1909名に服薬情報の郵送を行い、さらに薬局で声掛け運動も行い、24名が薬局へ持参した。薬局からの報告書に薬局への持参、医療機関への情報提供、処方の変更など減薬までのプロセスを組み込み見える化を図った。また、薬効分類の重複が多い医薬品は、消化性潰瘍用剤が多く、該当薬剤全体の27%を占め、次に解熱鎮痛消炎剤で11.9%であったまた、STOPP-Jのリストにある薬剤は、催眠鎮静剤、抗不安剤であり、該当薬剤全体の20%程度を占め、次いで精神神経用剤が12.4%を占めていた。以上から利用薬局数、受診医療機関数の多い患者、消化性潰瘍用剤や解熱鎮痛消炎剤、催眠鎮静剤、抗不安剤や精神神経用剤を服用している患者を対象にポリファーマシー対策を行う必要があると考える。 3.岩手県薬剤師会にて、Web上にて2回ポリファーマシー関連の講演を行い、さらには薬剤師会側でトレーシングレポートの講演も追加で実施していただき、スキルアップの向上に寄与できた。しかしながら、Web上での開催であり、参加者数から見ると多くの薬剤師が興味をもっており、実践的な研修を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
1.薬学的疑義照会事例の収集に関しては、募集期間を設定して紹介事例の情報収集を行う。 2.レセプトデータに基づく介入結果のデーターベース化に関しては、STOPP-J対象薬を組み込むことで、服用薬剤の郵送者の目視点検の効率化を行い、今回の薬効分類が重複する薬剤やSTOPP-Jで頻度の高い薬剤をマークすることで抽出精度を上げ、服薬情報を薬局もしくは医療機関への持参率を増やす方策を検討する。さらには、服薬情報の単なる郵送だけではポリファーマシー対策としての効果が薄いこともわかった。郵送した服薬情報を薬局薬剤師へ持参させること、患者の同意を得て医療機関と情報共有することまで行う事例を増やすことが必要である。 3. 岩手県薬剤師会と研修会や勉強会を通した薬学的スキルアップの向上は、本年度も後期高齢者の郵送事業に合わせて、講習会を2回開催する。また、服薬情報を薬局に持参しても薬局薬剤師の介入が難しいため、トレーシングレポートの記入の仕方、処方提案のやり方についての研修会を集合型で行い、実践力の強化を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた学会がWeb開催となり、旅費等が出費しなかった。 次年度は、研修開催祭に伴う費用や事例収集に伴う費用、共同研究者やデータ作成業者との打ち合わせの旅費等を予定している。
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