研究課題/領域番号 |
21K12047
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
岡部 拓也 静岡大学, 工学部, 准教授 (10324336)
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研究分担者 |
吉村 仁 長崎大学, 熱帯医学研究所, 客員教授 (10291957)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 長期最適化 / 確率過程 / 対数正規分布 |
研究実績の概要 |
株価や生物個体数など不確実さの下でランダムに時間変化する量の最大化(最適化問題)では,一般に短期最適化と長期最適化の間に齟齬が生じる.概念的に重要な問題として両者のトレードオフの解明が本研究の目的である.分野横断的な視点から長期持続性の問題に寄与する理論的フレームワークの構築を目指し,不確実性下における意思決定モデルの一般的枠組みを構築する.まず,長期最適化(生き残り戦略)に軸足を置きつつ,環境下での個体数(資産)の経時的変化をシミュレーション解析することにより,最適化問題の時間(生物系では世代)依存性を明らかにした.これにより短期最適化での目的関数の適用限界がしめされた.長期最適化では長期的に見て破産(絶滅)しない確率が問題となるが,上記の齟齬が顕著となるいわゆるロングテール分布では期待値概念の現実的妥当性が問題となってくる.期待値概念はハードサイエンスでは自明視されるものの,長期最適化を考える上では中央値(メディアン)がより優れた指標となる.生物系に限らず,長期持続性の問題は,学術的のみならず,われわれ人間社会にとって一般的に重要な課題である.本研究では,シミュレーション結果をもとに,どのような条件下で,そしていかなる意味で,標準的な期待「効用」(適応度)が現実的に有用ではなくなるかを明らかにする.一方で,幾何平均概念がどのように長期最適化問題に関与するかについて数理的解析をすすめている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
生態学関連の数理的成果は論文として公表することができたが,一方でこれ以前にまとめた株価変動模型に関する数理・経済物理的成果については,我々の側には非のない出版社・編集長側の不注意な落ち度によって予想外に長期間遅延することになった.関連する分散投資模型については理論解析を進展させているため,公表順序の逆転は生じるが,今後,当初予定の成果を達成できるものと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
生物系に引き続き経済系のテーマを解析する. 1. 生物進化にみられる両賭け(bet-hedging)仮説と金融投資のポートフォリオ理論における平均分散分析に共通する分散最小化と幾何平均概念の関係解明に取り組む. 2. 分散投資の最適配分に対するケリー基準で援用される幾何平均概念がどのように長期最適化問題に関与するかについて数理的解析をすすめる.
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次年度使用額が生じた理由 |
出張会合からオンラインへの変更にともない旅費を物品費にまわす際に余剰が出たため.これらの経費は少額のため次年度、消耗品の購入予算とする.
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