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2023 年度 実施状況報告書

短期最適性と長期持続性の相反問題解決とその応用

研究課題

研究課題/領域番号 21K12047
研究機関静岡大学

研究代表者

岡部 拓也  静岡大学, 工学部, 准教授 (10324336)

研究分担者 吉村 仁  長崎大学, 熱帯医学研究所, 客員教授 (10291957)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード対数成長率 / 長期持続性 / 大数の法則 / 幾何平均適応度
研究実績の概要

予測不可能な環境下での個体群サイズの時間的変動は進化生態学において主な関心事であり、短期的な最適化は長期的持続性を損ないうるという意味で、最適化問題を設定する際には時間スケールが重要な要素となる.大数の法則により、ランダム過程のサンプル数が無限大であるならば,成長率の期待値 が全体的なサイズ増加の適切な尺度となる.しかし,無限のサンプルは理想的極限でしかなく,現実にはこの数は有限とみなす必要がある.この有限性により,ランダム成長率の幾何平均が長期持続性を考える上で重要な役割を果たすことをしめした.短期最適化と長期最適化はそれぞれ成長率の期待値と幾何平均(対数成長率の期待値)を考えることに相当し,それぞれが問題となる時間スケールはランダム過程のサンプル数に依存する特徴的尺度により隔てられることがわかった.
上記の幾何平均は理論生態学における幾何平均適応度に相当し,幾何平均適応度を高めることは適応度の世代間分散を抑制することを意味するため,分散をリスクの尺度とみなすポートフォリオの考えと対応している.ただいずれの尺度もランダム環境下で変動する人口・資産サイズが絶滅・破産する確率と定量的に対応するわけではない.そこで絶滅確率に基づく新たな指標として,幾何平均適応度を修正する類似の尺度を提示した.この指標に基づく絶滅・破産確率の最小化は幾何平均適応度の最大化や平均適応度の分散の最小化とは同等ではないが,これら三者は定性的には相互に関連していることをしめした.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

申請した研究課題の進捗状況についてはおおむね順調に進展したものの,成果を論文の形で公表する点において想定外の遅延が生じてしまった.数値シミュレーション結果をまとめた論文はトップジャーナルにて査読にまわったものの結果として掲載とはならず,その後も出版を確定させることができないまま助成期間終了をむかえてしまった.

今後の研究の推進方策

絶滅・破産確率のシミュレーション解析結果に関する現在投稿中の論文を可能な限り早急に公表できるよう全力を尽くしたい.絶滅確率は長期持続性の指標となりうるものの,絶滅がほぼ確実な場合など数値的差異が微小な場合は,たとえば絶滅までの時間尺度の期待値のような確率で重みづけされた統計量を扱う方が,より直感的把握の容易な尺度になることが期待される.そうした統計量について同様に数値解析をすすめることで新たな知見が得られるか検討をすすめたい.

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じた理由は論文出版費が不確定であったことによる.助成期間内に出版費の支出が間に合うか不透明な論文が2件あり,円安その他の事情により必要経費に大きな不確実性があったため計画を変更して助成期間を延長申請していたものが,結果として1件については年度内の出版が間に合いかつ出版費も想定していたより少額で済むこととなったが,もう1件は未だ投稿中のまま残すこととなった.出版費は比較的高額なことから計算用PCの主要部品(i7-14700K)の購入を控えねばならなかった.残額はこれらに充当する予定でいる.

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2024

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Evolutionary origins of Fibonacci phyllotaxis in land plants2024

    • 著者名/発表者名
      Takuya Okabe
    • 雑誌名

      HELIYON

      巻: 10 ページ: e27812

    • DOI

      10.1016/j.heliyon.2024.e27812

    • 査読あり / オープンアクセス

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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