研究課題/領域番号 |
21K12052
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
青森 久 中京大学, 工学部, 准教授 (20453607)
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研究分担者 |
大竹 敢 玉川大学, 工学部, 教授 (20296883)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 可逆画像伝送 / ビット深度拡張 / セルラーニューラルネットワーク / Predictive Filter Flow |
研究実績の概要 |
一般に画像の減色は非可逆圧縮であり, 減色された画像から原画像を完全に再現する手法は現在のところ存在しない. そこで, 可逆階調圧縮方式を実現する技術基盤を確立するため,「シグマデルタ型セルラーニューラルネットワーク(SD-CNN)による可逆画像伝送方式」,「深層学習によるビット深度拡張手法」に関して次の2項目について研究を進展させた. 1.SD-CNNによる画像の可逆パルス伝送方式の開発 2.ビット深度拡張のための基本モデルの開発 画像の可逆パルス伝送方式に関しては,申請者らが開発したCNNを予測器として用いる階層型可逆符号化方式の知見をSD-CNNの設計に導入することで,SD-CNNによる画像の可逆パルス伝送方式を実現した.本手法は,SD-CNNが出力するパルス画像群から画像を再構成する方式に応じて,画像のパルス伝送と階調圧縮を選択可能である.画像のパルス伝送については,パルス画像群をフィードバックを有する積算器を用いて再構成することにより,伝送効率が大幅に改善することを明らかにした.階調圧縮については,メディアンカット法と遜色ない圧縮性能を有することを明らかにしている. ビット深度拡張のための基本モデルの開発については,画像の解像度拡張の1つであるデモザイキング処理で利用される最適な適応フィルタの学習とチャネル間相関に関して,適応フィルタに基づく深層学習モデルおよびEnd-to-Endな深層学習モデルをビット深度拡張手法へ導入することを中心に研究を進めた.適応フィルタによるビット深度拡張には,深層学習モデルとしてPredictive Filter Flowを導入し,多くの画像データセットにおいて従来手法より優れた性能を持つことを明らかにした. これらの成果と本研究課題に関連した周辺技術については,既に査読付き学術論文や査読付き国際会議において公表済みである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は,新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う半導体等の電子部品不足により,深層学習に使用するGPUの購入が極めて困難であった.このため,深層学習の研究体制が整っている研究分担者を新たに追加し研究体制を見直した.早急に研究体制を見直したことにより,研究計画に与える影響は軽微であると考えている. 今年度は,本課題の核となるSD-CNNによる可逆画像伝送方式の開発と,ビット深度拡張のための深層学習モデルの開発について重点的に取り組んだ. SD-CNNによる画像の可逆パルス伝送を可能とする方式を実現し,さらにPredictive Filter Flowによるビット深度拡張方式は性能も良好である.このため,SD-CNNが出力するパルス画像群から生成された階調圧縮画像を対象としたビット深度拡張方式を評価実験する環境が整い研究計画を大きく前進させることができたと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は,前年度に可逆画像伝送を実現した方式の性能向上とビット深度拡張を実現する深層学習モデルの高度化に取り組む. 具体的には,SD-CNNの2層化によるダイナミクスの高度化とパルス画像群の再構成法について検討し,伝送効率の改善を図る.また,SD-CNNによるパルス情報伝送の適用範囲を一般的なバイナリデータに拡張することを視野に入れ,テキストデータに拡張することを検討する. 深層学習モデルの高度化については,適応フィルタモデル並びにEnd-to-Endモデルに関して,アテンションモデルの導入や色差のビット深度情報の利用について検討し性能向上を図る.さらに,提案する両モデルの統合を視野に入れた検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う半導体等の電子部品不足により,物品の調達計画に遅れが生じたため残金が発生している.また,当初参加を予定していた国際学会が完全オンライン開催となったため,旅費を支出しなかった.なお,感染症対策として在宅での研究を推奨していたため,本研究課題に従事する学生の人件費を計上しなかった.論文掲載料については,安く抑えられたため残金が生じた. これにより生じた次年度使用額については,調達が遅れた物品の購入や本研究課題に関連したテーマに従事する学生の学会発表旅費などに有効活用する予定である.
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