研究課題/領域番号 |
21K12053
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
園田 耕平 立命館大学, 情報理工学部, 助教 (90638628)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 群れ行動 / 群制御手法 / 群ロボット |
研究実績の概要 |
【群回避制御手法の開発】 開発済みの「高速情報伝搬を用いた群制御手法」による障害物回避のシミュレーションを行なった。当該の群制御は、「個体間相互作用」をとおして変化が大きい個体の動きが「高速」に伝搬する(その代わり、通常の群制御における安定性は犠牲になる)。この制御手法の特質すべき点は、天敵の発見などによる先頭個体の「急激な反転行動」が高速に後方個体につたわり、群れ全体が急ターンするという動きが可能になるのである。この運動は既存の「平均的相互作用」による群制御では実現しえないものであることは、計算機シミュレーションにより実証されている。本研究では、そのような群制御の特徴をふまえ、障害物回避のシミュレーションを検証した。先頭個体が障害物を回避するときに「急激な進行方向の変化」がおこるが、それが後方個体に高速伝搬し、群れ全体が回避方向を共有して集団回避できると予測し、それを実証した。一方、既存の群制御手法では、群れは障害物を個体レベルで回避し、バラバラになる様子が観測された。 【小型ロボットの実装】 自己位置や他者位置を推定する能力がない小型群ロボット(GPSや外部センサーがないが、安価で大量生産できる)であるKilobotをもちいて、コマンド履歴による”疑似”自己位置推定を実装した「群探索アルゴリズム」を開発した。疑似自己位置推定によりKilobotはスタートへの帰巣が可能となったが、ゴールの情報を他個体と共有できないため周期的に帰巣し、スタート地点のロボットを介した情報共有システムにより、通常の群探索が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【群回避制御手法の開発】 当初から予定していたように、さらに群回避制御手法の発展を進めている。これまでの「高速情報伝搬を用いた群制御手法」に加え、「経路計画」や「進路決定」などの機能(マップを前提としない)を組み込むことで、より高度な群回避制御を目指している。また、ロボット実装のための基本的な制御手法の実装を完了した。この制御手法を使用することで、ロボットのダイナミックな集団行動が可能になるが、現在は、この基本的な制御手法をさらに改良し、より高度な群制御を実現するために、ロボットの実験を進めている。 【小型ロボットの実装】 自己位置や他者位置を推定する能力がない小型群ロボットKilobotを使用した「群探索アルゴリズム」を開発した。さらに、このアルゴリズムを改良することで、Kilobotの(疑似)自己位置推定能力を高度化することができ、これにより、ロボットの帰巣行動をよりスムーズに実現できるようになった。 ただし、Kilobotの既存性能ではゴールの情報を他個体と共有することができない。そのため、ロボットが周期的に帰巣する必要があるが、今後は、情報共有に関する改良を行い、よりスマートな群探索アルゴリズムを実現することを目指す。もしくは、自己位置推定や他者位置推定ができる小型群ロボットを採用することも検討していく必要性があるかもしれない。研究開発用プラットフォームがKilobot以外にも複数あるため、参考にしていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、群回避制御手法を開発し、群制御の特徴を利用した障害物回避の実験を行い、その有効性を検証した。さらに、その制御手法をロボットに実装することにより、Kilobotを使用して群探索アルゴリズムを開発した。しかし、Kilobotは他の個体の動きを検知する機能がないため、他の小型ロボットを使用する可能性があることが示唆された。 今後の推進方策としては、まず、群回避制御手法をさらに発展させることが必要である。この制御手法を実際のロボットに実装するためには基本的な制御手法の実装が必要で、この課題については、既に達成し、制御手法の実装がおえたことを報告した。しかし、ロボットの運動を制御するためには、他個体の動きを検知する機能が必要となり、そのため、他の小型ロボットを使用する可能性がでてきた。この点について、まずは既存の小型ロボットの中で、他個体の動きを検知する機能があるものを選定し、その上で、群制御の特徴を活かした制御手法を実現するために、選定したロボットの特性に合わせて、制御手法の改良を行う必要がある。 さらに、ロボット実装には多大なコストがかかるため、事前にシミュレーションを行うことが望まれる。そこで、ロボットシミュレーターの検討が必要となるだろう。シミュレーションを通じて、制御手法の改良や、適切なロボットの選定を行うことができるはずである。 以上より、今後の課題としては、他個体の動きを検知する機能があるロボットの選定と、そのロボットに合わせた制御手法の改良が求められる。また、ロボット実装には多大なコストがかかるため、事前にシミュレーションを行うことが重要である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、群制御アルゴリズムの開発と群ロボットへの基本的な実装に専念することで、使用額を抑えた。とくに、Kilobotに自己位置推定能力がないため、計画に変更が生じたことが大きな要因となった。自己位置推定能力がないと、ロボット同士の位置関係を把握することができず、群制御アルゴリズムの実装に支障をきたすためである。そのため、計画の変更が必要であり、別のロボットを使用することを検討したが、今回は使用する群ロボットのプラットフォームを変更する必要性が生じため、今年度中に新たなロボットを導入することは難しいと判断した。 また、次年度にはロボット制御専用の計算機を購入する予定があり、その費用を考慮して、今年度の使用額を抑えることを決定した。最後に、国際会議については、最終年度に集中して実施する予定であり、今年度はその準備に時間をかけることで、来年度に向けてより良い成果を残せるようにするため、その点でも使用額を抑えることにした。
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