最終年度は、高速情報伝播アルゴリズムを用いた「群れの捕食者回避行動のシミュレーション」をおこなった。 通常モデルでは、群れの大きさが増大するにつれて、後方個体が捕食者に気づくのが遅れる傾向がある。後方にいると、他の個体で視認できない捕食者を検知することが難しくなる。また、前方個体による情報伝達がほぼない状況である。というのも、通常モデルでは、平均的相互作用が土台となっているため、前方個体の動きが速やかに後方に伝達することはない。後方個体が捕食者に気づくのは、相互作用半径内に捕食者をとらえてはじめて可能となる。それはほぼ個体だけの捕食者検知と大差がない。 一方、提案モデルでは高速情報伝播アルゴリズムの働きによって、前方個体の動きがすばやく後方に伝達される。このとき、あくまで後方個体は捕食者の情報をえたわけでないが、前方個体の急激な動きの情報をえて、結果的に捕食者から逃げる行動をとることが可能となる。この情報伝播により、通常モデルよりも圧倒的に有利に後方個体も捕食者回避が達成できる。 シミュレーションではその様相を定量指標とともにモデルの捕食者回避行動について詳細に解析した。通常モデルと比較すると、提案モデルは回避速度がはやく、個体の回避率もたかい。また、捕食者との相対距離も大きく、時間的にもその傾向は安定している。なお、この結果は今年度、国内会議にて成果報告し、国際会議や海外学術誌に投稿する予定でもある。
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