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2022 年度 実施状況報告書

ランダム超離散カオス力学系に基づく情報源符号化の性能解析および最適設計とその応用

研究課題

研究課題/領域番号 21K12057
研究機関金沢大学

研究代表者

藤崎 礼志  金沢大学, 電子情報通信学系, 准教授 (80304757)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードk進ネックレス / 記号力学系 / β進展開 / k進 de Bruijn 系列 / 自己相関関数
研究実績の概要

長さnのk(≧2)進ネックレスとは,{0,1,...,k-1}上の有限列であって,巡回シフトに関する同値類の内,辞書式順序で最小の系列である.長さnのk進ネックレスの総数は古くから知られている[Redfield,1927].先頭の1文字と末尾の1文字を固定した両端固定k進ネックレスの数え上げは,従来用いられた代数的接近法を適用することができないため,本研究代表者が知る限り,Redfield以来未解決であった.2021年度には,長さnの両端固定k進ネックレスの総数を記号力学系およびβ進展開に基づき数え上げた.ここでβはβ>1の実数である.2022度には,2021年度の結果を拡張し,与えられた語頭と語尾を有する長さnの両端固定k進ネックレスの総数を数え上げた.
最近,Gabricらは,任意の自然数nに対して,O(n)のメモリを用いて,長さk^nの,単一のk進 de Bruijn 系列を生成するアルゴリズムを4種類提案した.1ビットあたりの計算量に関して,これらの内,3種はO(n),残りの1種は,ならし計算量O(1)である.各種2つのアルゴリズムから成り,合計8個のk進 de Bruijn 系列を生成する[Gabric et al., 2019].k進変換の超離散化であるk進 de Bruijn 系列の規格化自己相関関数は,時刻t=0に値1を取り,t=0を除く-n<t<nにおいて値0を取るという零相関帯(ZCZ (Zero Correlation Zone))を有することが知られている.2022年度に得られた,与えられた語頭と語尾を有する長さnの両端固定k進ネックレスの総数に基づき,任意のnに対して,Gabricらのアルゴリズムにより生成される長さk^nのk進 de Bruijn 系列8個すべてに対して,t=|n|における自己相関関数値を評価し,その公式を導出した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

k進ネックレスの数え上げは組合せ論の対象に留まらず,その結果を応用する分野は確率論,統計学,力学系,系列生成等と多岐に渡る.両端固定k進ネックレスの数え上げはk進ネックレスの数え上げの自然な拡張である.2022年度には,2021年度の結果を拡張し,任意のnとkに対して,与えられた語頭と語尾を有する長さnの両端固定k進ネックレスの総数を数え上げ,その一応用として,Gabricらのアルゴリズムで生成された長さk^nのk進 de Bruijn 系列8個すべての,時刻t=|n|における規格化自己相関関数の公式を導出した.本研究で得られた,与えられた語頭と語尾を有する長さnの両端固定k進ネックレスの総数は,組合せ論に貢献する基本的な結果であるので,今後,様々な分野への応用が期待される.
k進変換の超離散化であるde Bruijn系列は,系列長に関して,その個数が指数関数的に増大するという優れた特性を有し,その自己相関関数は上で述べたZCZを有するので,擬似乱数として,様々な分野で用いられている.しかしながら,de Bruijn系列の自己相関関数のZCZ以外の特性は,k=2の場合の上界しか知られておらず[Zhang & Chen, 1989],本研究代表者がk=2の場合の下界を求めた[NOLTA,IEICE, 2011].本研究において,一般のk≧2の場合に,任意のnに対して,Gabricらのアルゴリズムで生成される長さk^nのk進de Bruijn系列8個すべての,t=|n|における規格化自己相関関数の公式を導出したことは,de Bruijn系列の自己相関関数研究に貢献したといえる.

今後の研究の推進方策

現在,「研究実績の概要」で述べた今年度の研究結果を査読付き英文論文誌(IEICE Trans. on Fundamentals)に投稿するため執筆中であり,本研究課題の成果として掲載されるように努力する.
Gabricらのアルゴリズム4種の内,1ビットあたりの計算量に関して,ならし計算量O(1)のものについては,2021年度に,nが十分大きいとき,t=|n|における規格化自己相関関数の漸近挙動を明らかにした[IEICE Trans. on Fundamentals, 2023].残りの3種の漸近挙動も明らかにしたい.
Gabricらのアルゴリズムの内,ならし計算量O(1)のものは,先にSawadaらが発見しているので[Sawada et al., 2016],Sawadaらのアルゴリズムと呼ぶことにする.k進変換はβ進変換の特別の場合,すなわち,β=kの場合である.k進変換の超離散化であるk進 de Bruijn 系列の結果をβ≠kの場合への拡張を考えるのは自然である.本研究代表者は,βが黄金平均の場合に,Sawadaらのアルゴリズムを拡張し,任意の自然数nに対して,O(n)のメモリと1ビットあたりのならし計算量O(1)を用いる,超離散化黄金平均に基づく単一の最大周期列を効率的に生成するアルゴリズムを提案した.さらに,生成される最大周期列のt=|n|における自己相関関数値を評価し,その公式を導出した[SITA 2019].これはアルファベットが{0,1}の場合である.この結果をk≧2のアルファベット{0,1,...,k-1}の場合に拡張し,さらに,Gabricらのアルゴリズムの残りの3種の拡張も実行したい.

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍の状況に鑑み,交付申請時に計画していた2022年度旅費300,000円を使用しませんでした.基金課題ですので,来年度に繰り越し,基本的に旅費として使用させていただきます.

備考

金沢大学 研究者情報
https://ridb.kanazawa&#8209;u.ac.jp/public/detail.php?id=3123

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Enumeration of Both-Ends-Fixed k-Ary Necklaces and Its Applications2023

    • 著者名/発表者名
      FUJISAKI Hiroshi
    • 雑誌名

      IEICE Transactions on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences

      巻: E106.A ページ: 431~439

    • DOI

      10.1587/transfun.2022TAP0007

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Enumeration of Both-Ends-Fixed k-ary Necklaces and Its Applications2023

    • 著者名/発表者名
      FUJISAKI Hiroshi
    • 学会等名
      Workshop「数論とエルゴード理論」

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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