研究課題/領域番号 |
21K12063
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研究機関 | 山陽小野田市立山口東京理科大学 |
研究代表者 |
井上 啓 山陽小野田市立山口東京理科大学, 工学部, 教授 (70307700)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | カオスの定量化 / リアプノフ指数 / カオス尺度 / 拡張型カオス尺度 |
研究実績の概要 |
拡張型カオス尺度の計算式の改良に関する研究に取り組んだ.カオス尺度は,軌道の領域の有限等分割(以下,初期分割という)を行い,各分割要素に含まれる軌道点が時刻を1ステップ進めたときに複数の分割要素にどのように分離するかを表す情報量(条件付きエントロピー)を用いてカオスを定量化する.さらに,拡張型カオス尺度では,初期分割要素の細分化スケールという観点から,初期分割要素をさらに分割する(以下,再分割という).研究代表者は,多次元カオス写像に対して,ある典型的な条件の下で,写像点数,軌道の領域の初期分割数・再分割数を無限大にすると,拡張型カオス尺度がリアプノフ指数の総和と等しくなることを既に解析的に示している.しかしながら,実際の拡張型カオス尺度の数値計算では,写像点数,軌道の領域の初期分割数・再分割数を有限として扱う必要があった.そこで,本研究では,写像点数や軌道の領域の初期分割数が有限の下でも,拡張型カオス尺度の値がリアプノフ指数の総和とほぼ等しい値を取るように拡張型カオス尺度の計算式の改良を試みた.ここでは,各初期分割要素に含まれる写像点の領域の体積(2次元では面積)を推定する方法として,各初期分割要素に含まれる写像点の分散共分散行列を直交化する方法を新たに提案した.その結果,初期分割要素を再分割する手続きが不要となるといった効果も得ることができた.実際に,拡張型カオス尺度の改良形式を典型的な2次元カオス写像に適用した結果,拡張型カオス尺度とリアプノフ指数の総和のほぼ等しい値を取ることも確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
拡張型カオス尺度の計算式の改良に関しては,関連する研究も含めて順調に研究が進展した.また,令和3年度は,査読付論文を1件,国内学会・研究会において3件(招待講演を1件含む)の成果発表を行うことができた.以上から,本研究課題はおおむね順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
拡張型カオス尺度の改良形式の活用という観点から,多次元カオス写像のすべてのリアプノフ指数の計算方法についても検討する.また,当初の研究計画通りに,多次元連続系の数理モデルを用いた拡張型カオス尺度の評価に関する研究を遂行する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大により,当初予定していた国際会議への出張が取り止めになった他,国内学会もすべて対面開催からオンライン開催に切り替わったため,当初予定していた旅費を使用することができなかった.その一方で,査読付論文の論文投稿料(APC)の費用が当初予定に比べて大幅に掛かった.本年度は新型コロナウィルスの感染が落ち着くことを想定して,当初通りに予算執行し,昨年度の差額については,査読付論文の論文投稿料(APC)に充当させたいと考えている.
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