研究課題
前年度からの継続課題となっていた多次元系の数理モデルを用いた拡張型カオス尺度に関する研究に目途がついたため,観測された時系列データを用いた拡張型カオス尺度の評価に関する研究として,拡張型カオス尺度による交通流やレーザーカオスのカオスの定量化に関する研究に取り組んだ.交通流のカオスの定量化に関する研究では,一定間隔に信号が並べられた直線道路を一台の車が移動するモデルを用いて,同モデルより生成される時系列のカオスを定量化した.同モデルは単純な数理モデルにも関わらず,信号の切替のタイミングにより,車の速度が不規則な挙動を示すようになりカオスが生じるとされている.しかし,車の速度に関する力学的写像が明示されていないため,時系列データのみからカオスを定量化する必要がある.そこで,本研究では,同時系列に対して拡張型カオス尺度を適用し,リアプノフ指数の近似手法であるWolf法との比較を行った.その結果,拡張型カオス尺度がWolf法とほぼ同じ値を取るだけでなく,拡張型カオス尺度がWolf法に比べてかなり少ない計算時間で同時系列のカオスを定量化できることも示した.レーザーカオスのカオスの定量化に関する研究では,「戻り光のある時系列データの拡張型カオス尺度」から「戻り光のない時系列データの拡張型カオス尺度」を引いた差分が戻り光を加えたときに生じたカオスの強さとの示唆を得た.しかし,レーザーカオス光の時間発展は連続系であり,連続力学系でカオスが発生するには3次元以上の次元数が必要となる.そこで,戻り光を含んだシングルモード半導体レーザにおける時間発展を記述した3次元の常微分方程式(Lang-Kobayashi方程式)に対して拡張型カオス尺度の改良形式を適用し,レーザーカオス光のカオスの定量化が適切に行えることを示した.
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (3件)
Chaos, Solitons & Fractals
巻: 176 ページ: 114150~114150
10.1016/j.chaos.2023.114150
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