本研究の目的は,医用画像からの病変検出・良悪性鑑別における画像と所見(検査データに基づく医師の判断)を有効活用した方法の検討と,その超音波診断支援への適用である.超音波画像は肝臓や乳腺領域における腫瘍の存在を知るための最初の検査となることが多い.しかしながら,超音波プローブを自ら操作し撮影と診断とを同時におこなう必要があることから,医師や技師によってその診断能力に差が生じるという問題がある.本年度は,超音波動画像からの所見作成支援のための病変追跡を中心に研究を進めた.患者の腹部内を撮影する際に中に,その検出が断続的に途切れることにより診断の障害になることが指摘されている.これに対して,深層学習での検出結果とフレーム間の画像類似度を併用することで,途切れの少ない検出結果が得られることを示した. また,画像特徴と付帯情報の利用の基礎的な実験として,進行肝癌に対するチロシンキナーゼ阻害剤の効果予測に取り組んだ.肝がん分子標的治療薬は複数存在しているが,肝がんの進行速度や発見ときには進行がかなり進んでいることが多いため,すべての治療薬を試すことは困難であり,事前に特定の薬剤の有効性を推定できれば治療方法が有効に選択できる.検査データに対して特徴量の種類が多い画像特徴を多く使ってしまうと分類器の汎化性能が落ちてしまうことが確認されているが,特徴量間の相互情報量を利用して特徴量選択をおこなった.その後にk最近傍法によるクラス分類をおこなったところ,平均正解率,感度,特異度共に従来の特徴選択の方法を上回ることが確認された.
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