研究課題/領域番号 |
21K12088
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研究機関 | 流通経済大学 |
研究代表者 |
小川 健一朗 流通経済大学, 流通情報学部, 准教授 (90612656)
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研究分担者 |
三宅 美博 東京工業大学, 情報理工学院, 教授 (20219752)
天野 俊一 流通経済大学, 流通情報学部, 助教 (60879724)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 社会ネットワーク / 優先的選択規則 / 心理的効用 |
研究実績の概要 |
ネットワーク研究によれば、SNSなどの社会ネットワークではフォロア数の多い人物ほど他者がアクセスする傾向にあり、そのような社会ネットワークは参加者のフォロア数の分布がスケールフリー性を有するとされる。しかし近年、スケールフリーな社会ネットワークは実際にはそれほど多くないことが指摘されている。そもそも人間関係の選好(優先的選択規則)は単純に繋がりの数に基づくものではなく、繋がることによる「効用(費用と利益)」が重要であると考えられる。そこで本研究では、効用に基づく優先的選択規則に従う社会ネットワークの時間発展モデルを構築・分析することで、効用が社会の形成に与える影響を解明することを目的とする。 本年度は、本研究の基盤となる「人と人との繋がり(リンク)の距離に依存する効用に基づき時間発展する社会ネットワークの数理モデル」を構築した。そして、当該モデルの特別なケースとして、(1)直接効用(一次の距離に依存する効用)に基づく場合、(2)間接効用(二次の距離に依存する効用)に基づく場合、(3)ランダムに選択がなされる場合を数理解析と数値シミュレーションにより比較した結果、直接効用に基づく優先的選択規則に従い時間発展するネットワークはスケールフリー性を有する一方、間接的効用に基づく優先的選択規則に従い時間発展するネットワークは有限時間後にスケールフリー性を破り、局所的にリンクが集中する領域が形成されると共に、当該領域を中心として長時間後にネットワーク全体の効用を急激に増加させることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、予備研究に基づき計画通りに研究が進んだので、次年度の研究計画について確認すると共に、予備研究も行った。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、本研究の数理モデルにおけるパラメータ(費用と利益)依存性について、数理解析と数値シミュレーションを用いて明らかにする。具体的には、パラメータの値に応じて、(直接的効用,間接的効用)=(正,正),(負,正),(正,負)の3つの場合分けが生じる。この違いを見ることで、間接的効用がネットワーク全体の構造と効用に及ぼすシナジー効果について分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により、国内学会や研究会、国際会議の発表も全てオンラインとなるなど、当初計画していた研究発表を計画通りに行うことができなかったことと、予備研究に使用したネットワーク分析用システムをハイスペック化する必要なく本年度の研究が遂行できたことなどから、本年度使用予定であった経費の一部が残った。 そこで次年度は、国内学会や研究会、国際会議の発表の機会を増やすと共に、本年度に得られた研究成果を論文として投稿することを新たに計画している。繰越金はそのための費用として使用する予定である。
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