研究実績の概要 |
我々は、例えば音がしたり光が点滅したりしたら、そちらを向くだろう。それは、ある方向からの光や音といった視聴覚情報を受容したことでその方向に注意が向いたためである。このように、我々の注意は、様々な感覚入力により、常に向きを変えている。音情報を処理する能力を聴覚、光情報を処理する能力を視覚と言うならば、数字の情報を処理する能力を数覚と言う(Dehaene, S., Oxford University Press, 2011)。小さな数字の処理では左に、大きな数字の処理では右に注意が向くことが知られており、その理由として、メンタルナンバーラインという左から小さい順に数が視空間座標上に並ぶ仮想的な数直線が活性化されることが考えられているが(Fischer, M. H. et al., Nat. Neurosci., 2003)、体軸を中心とし、右手から左手にまたがる座標上にもまた、そのような数直線があることが考えられる。 本研究課題は、(1)数字を提示し、その後数字の左または右に視覚刺激を提示する課題の作成、(2)(1)と同様だが、左手または右手にアイソレータと振動モーターを用いて触覚刺激を提示する課題の作成、(3)被験者を用いての(1)(2)の課題の検証、(4)被験者頭頂連合野に経頭蓋直流電流刺激(tDCS)を与えて不活化し、視空間座標および体軸座標のメンタルナンバーラインの活性化に関わるかどうかを検証する、と言うものである。2021年度は、(1)-(3)までを行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響により、(1)、(2)のみの実施となった。
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