研究課題/領域番号 |
21K12097
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
小野 景子 同志社大学, 理工学部, 准教授 (80550235)
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研究分担者 |
花田 良子 関西大学, システム理工学部, 准教授 (30511711)
大木 健太郎 京都大学, 情報学研究科, 助教 (40639233)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 感性モデル / 深層学習 / クラスタリング / 遺伝的プログラミング / 意思決定 / モデル選択 |
研究実績の概要 |
ユーザーの感性のモデル化はECサイトにおける推薦やマーケティング戦略の策定に留まらず,ユーザー理解に繋がる重要な課題である.モデル化する対象を単純化し,単一の機械学習手法を用いてモデリングされることが多いが,本研究では,ユーザーの選好を深層学習手法,クラスタリング手法およびルールベース手法などを融合的させたモデル開発を行なっている.具体的には家具画像からのユーザー趣向のモデル化を行なっている. 深層学習手法が強い性能を示すと報告のある類似画像抽出器として深層学習手法を利用し,また,その高性能化のために画像特徴量(ディープ特徴量)の導入が有効であることを数値実験によって示した.また,クラスタリング手法においては自然言語処理手法である.Bag of Wordsと呼ばれる手法を画像処理に応用し,クラスタリング手法の有効性を検証した. 行動則や意思決定則の設計を最適化問題として解く遺伝的プログラミング(GP)においては,不正確なシミュレーション・試行環境のもとで過学習した解が,実環境で適切に動作しない問題が存在する.本研究では,シミュレーション環境上で人の試行により得られた解の模倣度合いを目的関数に導入することで,微小な誤差,変化がある不確実な実環境下において,適応力の高い行動則,意思決定則を生成することを目標とした. また,融合手法により作成したルールの意味理解のために,因果推論の分野で用いられる移動エントロピーを,ダイナミカルシステムに必要なパラメータ数の推定に応用し,観測結果のSN比が良くない場合でも,よく用いられる赤池情報量基準やベイズ情報量基準よりも精度良く必要な次数を推定できることを,数値実験によって示した.また,十分データ数がある場合,必要なパラメータ数が精度よく推定できる理由を理論的に示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は家具画像からユーザー趣向推定を,家具画像のクラスであるヨーロッパ調,スカンジナビア調,アジア調など画像スタイルの推定問題に置き換えて取り組んだ. 深層学習手法としては,クラス分類に長けているResNetモデルを採用し,ディープ特徴量としてはVGGモデルやResNetモデルの最終層の一つ前の全結合層から特徴量を抽出し,特徴量の次元数を最適化することによる,スタイル分類の性能向上を確認した.また,従来の画像処理手法の特徴量(色特徴量や形状特徴量)と融合するFusionモデルに拡張した.クラスタリング手法ではBag of Words特徴量から作成した木構造をブースティグ手法により構造ルールをエントロピーにより最適化する手法を導入した. 高い性能を持つルールを作成できるGP法の改良としては,室内移動のタスクを行う巡回ロボットの行動則の最適化を対象とし,学習環境と微小な変化あるいは誤差があるような不確実な環境に対して,人の行動パターンを模倣する要素を目的関数に導入した.人工蟻の餌獲得問題を対象とし,GPで最適化して得られた行動則を,学習マップに微小な変化を加えたテストマップで動作させたところ,高い性能を示す行動則が得られることを確認した. さらに,移動エントロピーは,良い木構造になっているかどうかを判別する基準の一つとして用いることができる.まずは時系列信号に対して扱い,その性能は数値実験において確かめられたため,悪くないペースで進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
H22年度は家具のスタイル推定だけでなく,被験者実験を行いユーザーが好む家具や部屋画像を用いて,実データでの性能検証を目指す. 深層学習手法では,ResNetやVGGモデルによる性能は検証できたため,更なる性能向上のために画像の注目領域を特定する.これは,ユーザーが好みを判断する際に画像全体を見ているのではなく,どこか気に入った物を注目して見ているはずであるという我々の仮定に基づいている.具体的にはAttention Networkの導入を考えている. GP法の応用では,ユーザの嗜好,感性を模する意思決定則の推定にGPを適用する.H21年度に課題とした行動則のパターン学習において,テストデータにおいて失敗しているケースには,問題の複雑化による学習データでの探索失敗に起因するものがあった.そのためGPの探索性能の向上の鍵となる交叉の改良も併せて遂行する必要がある.また,移動エントロピーの概念を木構造に適用し,異なるサイズの木構造に対する定量評価方法の構築を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスの蔓延により,次の理由により計画との差額が生じた.(1)国際学会がオンラインになり渡航が不要になったため,(2)被験者実験を実施を見送ったため. 次年度は,今年度に実施できなかった被験者実験を実施し,そのアルバイト代として,国際学会に現地で開催される可能性が高いため,その参加費として,および研究成果を論文にする際の費用として,研究費を使用する予定である.
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