複数の人とロボットの協働的コミュニケーションに着目し,感情を含むロボットの意思決定,行動,会話などの振る舞いの変化が人にどのような印象を与えるか,さらには人の行動に影響を与えるかを調査するために,感情を中心とした内部状態モデルによりコミュニケーションにおける振る舞いが変化するロボットやエージェントを開発し,複数の応用システムに実装して評価実験を行った.まず,昨年度に開発した感情伝播を伴うロボットの感情表出モデルにおいては,VR空間に再現したスポーツカフェで人とロボットの集団が一緒に野球の試合を観戦する状況下において,ロボット集団の性格特性により感情伝播が変化する仕組みを開発し,人とロボットの集団における感情伝播を伴う臨場感の演出効果を検証した.その結果,感情表出における性格の異なるロボット集団の感情伝播が人の内部感情に影響を与え,観戦における臨場感演出に寄与することが示唆された. また,これまでに開発してきた暗黙的な集団規範を獲得できるロボットの意思決定モデルに感情表出モデルを融合し,集団型最終通達ゲームにおける人間とロボットのインタラクション実験においてロボットの感情表現が人にどのような印象変化や行動変化を与えるかを実験により検証した.その結果,感情表出を伴うロボットとの協力関係と利害関係が共存する協働において,ロボットの適切な感情表現が人に対して良い印象を与え,集団行動における良好なコミュニケーションに繋がることが示唆された. さらに人とロボットのインタラクションにおいて,コミュニケーションにおける違いの心理的な距離感の変化や,時間の経過によるロボットの感情表現や行動の変化が人に対してどのような印象をもたらすかを仮想環境におけるコミュニケーション実験により調査し,ロボットと人との良好なコミュニケーションを実現するための知見を得ることができた.
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