本研究では溶媒和の効果を正確に取り入れた上でリガンド分子の結合部位や結合親和性を予測可能なドッキング法を開発する事を目的している。そのために、1)蛋白質周囲におけるリガンド分子の複数のフラグメントの分布に基づく結合親和性の予測法および、2)蛋白質分子のゆらぎを考慮したアンサンブルドッキング法の開発を試みている。2021年度はアンサンブルドッキング法の開発およびテスト計算を実施し、2022年度はリガンド分子の複数のフラグメントの分布に基づく結合親和性の予測法の開発を実施し、正しい結合部位を予測可能であることを示した。2023年度ではアンサンブルドッキングに基づいて、複数のスナップショットに対するリガンドの結合部位を特定する手法をチャネル蛋白質の機能解析へ応用した。具体的には1)分子シミュレーションから得られたチャネル蛋白質の多数のスナップショットに対してRISM計算を実行した2)得られた多数のスナップショットにおいて周囲の多原子イオンの分布を計算し、それぞれのスナップショット上でイオンが存在しやすい空間を探索した。3)複数スナップショットから得られた分布の濃度の高い領域を繋げ合わせることでイオンの通過する経路を予測した。4)それらを複数の変異体で実行することで、変異と機能との関係を予測した。本計算はTSUBAME3.0を用いて実行した。その結果、1残基変異によるイオン排出活性の低下と矛盾のない結果を得ることができた。現在本データの論文化を試みている。また、2022年度の計算結果をCBI学会2023年大会にて報告した。
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