研究課題/領域番号 |
21K12109
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
加藤 有己 大阪大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (10511280)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | シングルセル / 細胞動態予測 / 疑似時間経路 |
研究実績の概要 |
近年、シングルセルRNAシークエンシング (scRNA-seq) と呼ばれる実験手法が確立され、組織や器官を形作る様々な細胞の種類や個数を、遺伝子発現情報をもとに定量できるようになった。ある時刻で組織から取得した細胞集団は、未分化のものから分化したものまで、様々な経過時間の細胞が含まれると考えられる。そこで、scRNA-seqによる各細胞の発現データをコンピューターで解析することで、細胞状態の疑似的な時間軸に関する遷移過程 (細胞経路) を捉えることができる。特に、実験条件の異なる2つのscRNA-seqデータから導出される細胞経路を比較することで、条件の違いによって変化する制御遺伝子を同定できると期待される。本研究では、2つの細胞経路を、分岐などの形状情報を考慮し高精度で比較する手法を確立する。これにより、例えば疾患モデルとコントロールの二者の細胞経路を比較し、発現ダイナミクスの異なる因子を抽出することで、疾患病態の解明に迫ることができる。
今年度は、前年度開発した木のアラインメントに基づく細胞経路比較法CAPITALの網羅的評価を行った。具体的に、シミュレーションデータを用いて、既存のデータ統合アプローチとの比較を行った結果、CAPITALは他手法と比べてアラインメント精度が統計的に有意に高いことを示した。前年度までに得られた造血系細胞集団データによるCAPITALアラインメントの妥当性と合わせて、研究成果を論文にまとめ、2022年10月にNature Communications誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究成果を国際雑誌に発表するに至ったため、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
scRNA-seqデータから疑似的に細胞の時間情報を復元できるものの、組織における細胞の空間情報は失われている。そのため、scRNA-seqデータのみから疑似的な空間情報を復元できるアルゴリズムの開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年に引き続き新型コロナ感染症蔓延の影響により、旅費の使用額がなくなり、次年度使用額が生じた。
翌年度の使用計画は以下の通りである。物品費として、PC、周辺機器、関連書籍を計上し、研究調査、打ち合わせ、成果発表のための旅費、その他として、ソフトウェア使用年間契約、学術雑誌購読年間契約、学会参加費などを計上する。
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