研究課題/領域番号 |
21K12110
|
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
高岡 裕 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (20332281)
|
研究分担者 |
菅野 亜紀 富山大学, 学術研究部医学系, 特命助教 (20457039)
永野 達也 神戸大学, 医学研究科, 講師 (80624684)
大田 美香 富山大学, 学術研究部医学系, 特命助教 (20274706)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | EGFR-TKI / EGFRチロシンキナーゼ阻害剤 / 分子標的薬 / 分子シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、肺がん分子標的薬であるEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)を1、2、3の世代別に分け、申請者らが既に進めている第1世代のゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ(第2世代)、オシメルチニブ(第3世代)と各変異型EGFRとの薬物相互作用を、チロシンキナーゼ活性阻害の分子シミュレーション解析により解明し、各々の薬効予測法を確立することである。今回、本研究により変異型EGFRごとの最適な肺 がん分子標的薬の選択指標を提供可能にする方法論の確立を目指す。 2022年度は、前年度に導入した高速の計算機と解析に必要なプログラムを用いて解析を進めた。その中で、第一世代薬であるゲフィチニブのドッキング解析結果と臨床報告が合わない事例をいくつか経験し、解析系の見直しを進めた。そして、臨床現場ではピンポイントで遺伝子変異の有無をみていることから、実際には複数の変異が入っているのではないかとの仮説を立てた。そこで分担研究者の永野博士と調査し、第一世代薬のエルロチニブにおいて、L858R変異またはA871G変異ではいずれもエルロチニブは有効だが、L858RとA871Gの複数変異では効かないという報告を見出した。これらについて、EGFR二量体の各単独変異と複数変異について、(1)変異ホモ、(2) レシーバーが変異型のヘテロ、(3)アクティベータが変異型のヘテロの計3分子、計9分子の立体構造を解析し、エルロチニブでドッキング解析した。その結果、in vivoの結果を分子シミュレーションで再現可能な解析条件を見出すことに成功した。この結果は、EGFR-TKIの治療対象の決定に際してピンポイントでの遺伝子変異の検査では不十分ということを示唆している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エルロチニブでの、L858R変異またはA871G変異ではいずれもエルロチニブは有効だが、L858RとA871Gの複数変異では効かない、という結果を再現可能な解析系と評価分析法を確立したこと。また、その解析結果からEGFR-TKIの治療対象の決定に際してピンポイントでの遺伝子変異の検査では不十分というエビデンスを得たこと、が理由である。これにより、アファチニブ(第2世代)、オシメルチニブ(第3世代)の解析系確立へ道が開いたといえるため、おおむね順調に進展しているという区分を選択した。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き、エルロチニブ、アファチニブなどでのドッキング解析を進め、ゲフィチニブの結果と合わせて検討を進める。以上の研究を進めることで、EGFR-TKIの薬効予測法確立に向けて研究を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ドッキング解析結果と臨床報告が合わない事例を見出し、その問題解決を行うことが研究遂行に必須であったので研究計画を変更し、その解明にあたったために使用計画も併せて変更した。その結果次年度使用額が生じた。 2022年度に前述の問題を解明し、解析系の正しさを担保できたので、本来の研究計画に戻して予算執行を進める。
|